FinalFantasy7

□走り出した寂しさ
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私の薬指にその金色に輝くリングがはめ込まれそうになった、その時式場の扉が勢いよく開く。
目の前の白いスーツを纏った男の人より私が愛した黒髪の彼が私を攫いに来た。
新郎を一瞥し、頭を下げるとそのまま私の手首を掴み、全速力で走る。
走るには不安定なヒールの靴なんか途中で脱ぎ捨てて、
彼が乗ってきたであろう真っ黒な車に乗り込む。
後ろから追ってきた新郎と、その家族や私達のお祝いをしにきた人皆、後ろから追ってくるのを私と、ツォン、二人で嘲笑いながら誰も私達を見つけられないようなところへと逃げる。
不意に車を停めると彼はそっと、私のむき出しの肩に自分の着ていたスーツのジャケットを羽織らせる。
そして私を掻き抱くと、嬉しさあまって泣いている私の瞼に一つキスを落とす。

なんてドラマみたいな夢の話あるわけない、か。
金色のリングより綺麗な金色の髪をしている彼は私のベールをゆっくりとした動作で捲り上げると、顔を近づけてくる。
「誓いのキスを─」
神父の声で私の唇に柔らかなそれが触れる。
離れ際に目を開け、そっと客席を見ると、一番前の席でツォンが悲しそうにも見える表情で私を見ていた。


そんな目で見るくらいなら私を拐っていってよ


不意に涙が一つ流れる。
ルーファウスはどうしたのかと小声で私に聞いた。

ううん、幸せすぎて涙が出ちゃったの

そういうとルーファウスは満足そうに笑った。
ツォン、ツォン。私が愛した愛しい人。心だけはそちらに置いておくから



(好きな男の前で他の男とキスなんて滑稽じゃないの)



20090720

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