涼宮ハルヒの憂鬱

□さよならなんて言わないで
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「あ、はは…どうしよう古泉、私消えちゃう」

どうやら99パーセントの確率で彼女はキョン君が好きらしかった。 以前からその兆候は見えていたもののキョン君に対する恋愛感情に本人より先に気付いていたのは僕だった。

だから本人がその感情に気付くより先に、先手をうっておかなければならなかった。涼宮ハルヒの機嫌を損ね、世界を消してしまわないように。

そこで思い付いたのは恋愛対象を他に移動させる、つまりは僕を好きにならせることだった。
ただ、思ったより彼女はキョン君にのめり込んでいたらしい。少しも僕に振り向くそぶりも見せなかった。

もしかしたら使命感より個人的な感情の方が勝っていたのかもしれない。
世界よりもまず、消してほしくなかったのは彼女という存在自体。
それほど僕もまた、恋愛感情上で悩める一人の人間だったらしい。
こんなにも彼女が愛おしい、なんて。


「くどいようですが…僕では駄目、なんですよね」

「ごめん、古泉…ごめん。キョンが好きだから、」


そう何度も溢れ出す涙を拭いながら残酷な言葉を僕に突き刺す。 ごめん と。

この世界を動かすことができるのが涼宮ハルヒでなく、僕であったのならよかったのにと切実に思った。それもまた彼女と一緒で、僕たちは叶わない恋に叶わない願いをかける似た者同士である。


「私も普通の恋、したかった…な」


彼女のキョン君への感情が魔法だったら、僕がキスで解いてあげることができるのに、


「大丈夫です、貴女が消えたら僕も一緒に消えることを約束しますよ」

「…、こいずみ」

「一緒にいますから、」




(どうして好きになった人が古泉じゃなかったんだろう)







20090522

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