捧げ物

□てつなぎ
1ページ/2ページ


秋澄む空。


夕日が鼠色の雲をてらてら輝かせる。
赤みを帯びた黄色のアスファルトに伸びる黒。

男性と女性の(と呼ぶには早い気がするが)影。


二人の間はじれったい。


不良じみた彼は手をポッケに入れたり出したり。

先には白いやわらかそうな手。


彼女の手だ。


彼は手を、つなぎたいのだ。


彼女は彼女で定位置が見つからず、ふらふらさせる。
羞恥心やらで自分からはつなげない。

彼からを、淡く願う。


影が闇と同化し始めた。


ベタついた手、荒っぽくふき、彼女の手をつかんだ。

角張った手とおんなのこの丸を帯びた手がからむ。


ただ、
それだけのことなのに

あたたかい。


彼の手だから。
彼女の手だから。






end
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ