捧げ物
□てつなぎ
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秋澄む空。
夕日が鼠色の雲をてらてら輝かせる。
赤みを帯びた黄色のアスファルトに伸びる黒。
男性と女性の(と呼ぶには早い気がするが)影。
二人の間はじれったい。
不良じみた彼は手をポッケに入れたり出したり。
先には白いやわらかそうな手。
彼女の手だ。
彼は手を、つなぎたいのだ。
彼女は彼女で定位置が見つからず、ふらふらさせる。
羞恥心やらで自分からはつなげない。
彼からを、淡く願う。
影が闇と同化し始めた。
ベタついた手、荒っぽくふき、彼女の手をつかんだ。
角張った手とおんなのこの丸を帯びた手がからむ。
ただ、
それだけのことなのに
あたたかい。
彼の手だから。
彼女の手だから。
end