捧げ物
□流星のプロポーズ
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「京子ちゃん幸せそうでしたね〜」
「当たり前だろ。十代目の妻になるんだから」
月明かりに照らされた夜道を歩く男女。ひんやりした風に当たり、火照った身体を冷やす。
先程まで、『十代目』こと沢田綱吉と『京子ちゃん』旧姓、笹川京子の結婚式だったのだ。
「隼人さん泣いてましたね」
「泣いてねー」
「泣いてましたよ」
「…ちょっと目にゴミが入ったからだ」
「ほら泣いてたじゃないですか」
「お前も人のこと言えねぇだろうが」
恋人同士故に軽快に話す。
「ウェディングドレスもいいですよね」
「白無垢がイイって言っていなかったか」
「京子ちゃんを見ているとウェディングドレスもいいな、と思って。乙女の夢ですよ!」
花嫁からもらったブーケを高く掲げ、朗らかに言い放つ。
「両方着ればいいんじゃねぇか」
「それもそうですね」
「…お前が着物だと俺は袴かよ」
「ですね。大丈夫ですよ。隼人さんだって似合います」
「『だって』が引っ掛かるな」
深くない浅い黒の空。白くもやがかかる。
「あれ?」
「どうした」
「この会話、隼人さんとハルが結婚すること前提で話していませんか?」
薄暗いここで碧の眼が少し光った。
「お前みたいなアホ女、俺以外に結婚する物好きがいるかよ」
流星のプロポーズ
(…プロポーズですよね?)
(じゃなきゃなんだ)
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