短編

□近づく距離
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私の片思いの人。


銀魂高校、保健医高杉。


廊下を歩けば女の子たちは先生の周りに集まってキャーキャー騒ぐ。


でも先生は迷惑そうにしている。


私は女の子たちのように騒いだりしない。


好きな人に迷惑かけたくないから、遠くから見てるだけ。


そして、仮にも教師と生徒という関係だ。


そんな遠い距離では、この想いはきっと届かない。


分かってるけど、それでも私は…


―――――――――――


ピーッ


体育の時間。
私たちはバスケをやっていた。

3Zの体育は、体育というよりは戦争だ。

普通では有り得ないスピードでボールが飛び、人も飛ぶ。


「危ねぇ!!」


『?…!!』


土方に声を掛けられた瞬間、私の頭に何かがぶつかった。


みんなが私の名前を呼ぶ。神楽が高杉先生を呼びに行ったところで私の意識はなくなった。


―――――――――――


『ん、んー?』


アレ、私…?


「大丈夫か?」


この声は…高杉先生…?


『んー?』


寝起きだからか視界が霞む。


「起きろ!!」


『はい!!』


いきなり怒鳴られて私は飛び起きた。


すぐに見えたのは白いカーテンに白いベッド。


『ここ…保健室?』


「アァ。」


頭が痛い。


飛び起きたせいかと思ったが、そうではないらしい。痛いところに手をやるとこぶが出来ていた。


「沖田が投げたボールが当たったんだと。」


『そうですか。じゃあ、失礼します。』

お腹が空いたので早く弁当を食べたくてベッドから降りた。

…はずなのに何故か私はベッドに戻っていた。


『はい?』


目の前にはうっすら笑う高杉先生の顔が。


――もしかして、押し倒された?


状況が解ってくると鼓動が速くなり、体が熱くなってきた。


『な、何するんですか高杉先生。』


「何か俺に言うことはねェのかよ。」


『?ありがとうございました。』


「違ェよ。」


『?』


何か他に言うことなんてあるのだろうか?


「分かんねーか。
…昨日授業中寝てたろ?」


『何で知って!!』


「いつも俺を見てるのも知ってる。」


『え…?』


どういう…


「こういうことだ。」


ニヤリと笑った先生。

そして、

キスをされた。


『!』


軽く触れるだけのキス。

ゆっくり唇が離れていく。


顔に熱が集まるのを感じた。


「お前だけじゃねェ。俺も見てたんだよ。
お前に惚れたからだ。」


『!!』


「で、言うことは?」


『私も、

私も好きです、高杉先生のこと!』


高杉先生は初めて優しく笑ってくれた。






「今日からは遠くじゃねェ。ちゃんと俺の近くにいろ。」

『うん。でもその前にこの体制をなんとかしてよ。』



09.04.20
壱萬打御礼小説
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