『買い出し中』
雪の降る夜。見事に今年のクリスマスはホワイトクリスマスになった。街にはカップルがあちこちにいる。イルミネーションを見ながらイチャイチャしているカップルを見ると………うん、幸せそうですね。
「はァ〜…」
「どうしたんだい?」
隣にいた雑渡さんが言った。同じ部所の上司で、ちょっと不気味な事で有名だ。
「いや、ちょっと……寒いですよね。息も白いな〜…と……」
というか、皆でクリスマス会をするのに何で買い出しに雑渡さんと私!?
「そうだね、じゃあぬくもる事する?」
「へ?」
何だろ、まさかこの歳になって押し倉饅頭とか!?いやいや、流石にないよね。
ギュッ
「!?」
ちょ………この人何抱き付いてんだ!!生憎、私の手にはケーキがっ!無茶な事はできない!
「あの……すみません、何を……」
あぁぁァァ――!!皆見ないで!カップルが私達を勘違いして、うわっ!イチャイチャしてる〜…とかいう目で見てるよ!つか、お前等さっきまでイチャイチャしてたじゃねェかよ!!
「え?暖かいでしょ?」
「いや、恥ずかしいんで離れて下さい」
「え〜、いいじゃん。ほら、皆イチャイチャしてるし」
「貴方の目は節穴ですか!?あれは皆カップル!というか、セクハラですよ!?」
そういえばこの人、変態って噂もあったな。
「ほら、行きますよ!皆待ってますから」
軽く空いていた左手で押し離すと、不服そうな顔をした。
「せっかく君と2人きりになれたのに」
「あのですね……」
あんたは2人きりになれたら何処でも抱き付くのかよ!
「カップルになればいいんだね」
「はァ?」
何を……
「私は好きだよ」
「!」
思わぬ言葉に私は驚くしかなかった。その目、優しく微笑む雑渡さんを見てられなくて、思わず目を反らしたが、雑渡さんの手により、再び目を合わせてしまった。
「こっちを見て」
「っ!」
破裂しそう。
「返事は今じゃなくていいから」
そう言うと、私の顔に当てていた手を下ろして、そのまま手を繋がれた。
「それじゃ、行こうか」
私が返事をする間もなく、歩きだした雑渡さん。未だ顔の火照りが冷めないまま、私は繋がれた手を見た。逞しい、少しゴツゴツした手、だけど確かに感じる温もり。嫌な気はしない。寧ろ……
ギュッ
「!」
握り返した。お願い、離さないで。
――――…‥
ハッピークリスマス^^