企画

□50000hitフリリク懿丕文
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『欲情連鎖』


自分はどちらかといえば艶事に関しては淡泊な方だと曹丕は思っていた。
常ならば己が身を慰める事などなかったのだが。
久しく触れられなかった為か、寝台に横たわると珍しく高まる情欲を抑えきれずに自嘲しながらも曹丕は明確な意図をもって自らの陰茎に触れる。直ぐに硬度をもったそれは熱を帯びるのも早かった。
始めは軽く触れるだけの児戯に等しい愛撫にも次第に力がこもる。
「…っ、ふ…ぁ…」
零れる吐息が更に気持ちを高ぶらせていく。
夢中になっていた曹丕は室内に侵入してきた気配に気付かなかった。
「…随分と、良さそうですね」
「…っ!!」
不意に聞こえてきた声に身体を強ばらせて振り返る。
この部屋に許可なく立ち入れるのは父親以外ではただ一人。
「仲達…」
「一応、声はお掛けしたのですが…ね」
司馬懿が寝台に腰掛けると微かに軋む音がした。
ふわりと司馬懿の指が曹丕の髪に触れる。
どこか楽しげな眼差しに曹丕は落ち着かない気持ちになった。
「仲た…」
「私に構わず、どうぞお続け下さい」
「っ…!?」
その微笑みに有無を言わせぬものを感じ、曹丕は再び下半身に手を伸ばした。
不測の出来事に一度は力を失ったものが勢いを取り戻す。
「…っ、あ…ぁ…っ」
心做しか先程より感じるのは見られているからなのか。
閉じていた瞼を開けると目の前に司馬懿の顔があった。
「ぁ…、ちゅ…た、つ…っ」
「気持ち良さそうですね」
見られながらするのはそんなに良いですか?
耳元で揶揄する様に囁く声にすら反応してしまう。
「んっ、あぁっ…も…っ」
「どうぞ達って下さい。…見ていて差し上げますから…」
妖艶な笑みを浮かべる司馬懿と目があった瞬間、曹丕は儚げな吐息と共に白濁とした熱を己が手に吐き出した。


ぐったりと四肢を投げ出して肩で息をする曹丕に司馬懿が覆い被さってくる。
「良かったですよ…とても淫らで」
微笑みながらそんな事を言われた。何時になく乱れてしまった曹丕は照れ臭くなって横を向く。
と、頬に唇の感触。
「…続き、よろしいですか?」
布越しに感じる司馬懿の熱に曹丕もまた高ぶっていく。
本当に今夜の自分はどうかしている。
自嘲しながら曹丕はするりと司馬懿の首に腕を絡めた。
「良い…許す…」
その笑みに誘われる様に司馬懿は曹丕に口付けると夢中で唇を貪る。
「っ、ふぁ…ん…っ…」
零れ落ちる吐息すら逃さないという様な深い口付けに息苦しくなりながらも、曹丕は自ら舌を絡めてそれに応える。
「…っ、どうした…?随分と…積極的ではないか…」
自分と同じかそれ以上に淡泊だと思っていた司馬懿の何時にない積極性に戸惑いつつも、曹丕は嬉しく思った。
「…あんな姿を見せられたら…」
「っ…あぁっ」
再び勃ち上がったものを握り込まれて擦られると曹丕の声が上がる。
「平常心でいられる訳がない…っ」
掠れる声音に悦楽が刺激される。
「ん…っ、あぁ…ちゅ…たつ…っ」
「こういう事をするのは…苦手なのかと、思っておりましたが…」
「…っ、ん…ぁ…っ」
「案外…お嫌いではないのですね」
どこか嬉しそうな司馬懿に曹丕は内心むず痒い思いをする。
「言うな…っ、自分でも、驚いて…いるのだ……、ぁあ…っ」
曹丕のもので濡れた指が奥に入り込んでくる。快楽の在処を探る指の動きと、胸の突起に吸い付く司馬懿の唇に曹丕は翻弄される。
司馬懿もまた乱れる曹丕に煽られていた。
「…申し訳、ありません…っ」
「?…っ、あぁ…っ!」
不意の謝罪に驚いたのも束の間、曹丕は力強く入り込んでくる熱に高い声を上げた。
いつも必要以上に時間をかけて慣らす所を、余裕が無いのか性急に、それでも曹丕の様子を伺いながらゆっくりと進入してくる。
心做しか普段より膨張している様に感じる猛りに押し広げられる感覚は苦しかったが、求められるのが嬉しくて曹丕は息を吐いて懸命にそれを受け入れようとする。
そうして最奥まで辿り着くと司馬懿は一度動きを止めた。
「…大丈夫、ですか?」
そんなに大切にしてくれなくても良いのに、と曹丕は思う。
欲するままに奪えば良い。
(お前が望むのなら、私はいくらでも)
「構わぬ…っ、続けろ…」
「御意…」
それから程なく荒々しく揺さぶられ、必死にその背に縋り付く。時折爪を立てれば司馬懿の顔が嬉しそうに歪んだ。
どうにもお互い被虐趣味がある様で。
困ったものだと思いつつも、まぁ似た者同士でこれはこれで良いのかもしれない、とも思った。
曹丕が口付けを強請ると直ぐさま唇を塞がれた。
夢中で舌を絡ませていると、挿入に一度は萎えた陰茎を再び掴まれる。突き上げと同じ激しさで擦られ熱を取り戻し、咥え込んでいる猛りを締め付けてしまう。
「ふ…っ、んっ、あぁ…っ、ちゅ…たつ…、も……っ」
「…っ、達きそう…ですか?」
悦楽に顔を歪める司馬懿もまた限界が近い様で、揺さぶる速度を上げてくる。
「あ…っ、ああ─…っ!」
「……っ!」
一際甘い声を上げ司馬懿の手に吐精すると同時に、曹丕は最奥に広がっていく熱を感じた。
そして、心地良い疲労感の中、意識を手放した。


曹丕が目を覚ますと、辺りはまだ薄暗かった。
温もりを感じて横を向くと目の前に司馬懿の寝顔。
体はすっかり清められていて寝衣も着せられていた。
甲斐甲斐しい事だ。
それにしても。
もしかすると、こんな風に無防備な司馬懿の姿は初めて見るかもしれない。
そっとその頬に触れる。
昨晩の痴態を思い返して少々面映ゆい。
二人して何時になく乱れたものだ。
それとも本当は何時もあんな風にしたいのだろうか。
(お前がそれを望むのなら…)
司馬懿の胸元に顔をうずめ目を閉じる。
心臓の音を聞きながら曹丕は再び眠りに落ちた。





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