☆夢置き場☆
□染まれ染まれ紅き蝶
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もはや花など必要ない大切なものなど何もなかった。
ならば狂ってしまえばいい。
俺も、お前も―…
染まれ染まれ紅き蝶
「……誰だ」
背後の気配が一瞬強張る。ルカは血に塗れた長剣を下ろし、その気配に問うた。
「こんなところに人がいるとは思わなかったから…
もしかして私、剣術の邪魔をしちゃった?」
それはまだ幼い少女の声だった。
ルカは答えない。
少女はそれを否定のものととったようだ。
嬉しそうに少女は言った。
「私ね、花を摘みに来たの。お母さんにあげる花を…。」
母と聞いてルカの身体が強張る。
ゆっくりルカが振り返った。
少女はきょとんとしてルカに言った。
「泣いてたの…?」
顔を覗きこまれ、ルカは俯いて少女に言った
「お前には関係ない」
花はルカによって一つ残らず踏み荒らされていた。
こんなものを摘もうとは思わないだろう。
無邪気に笑う少女の顔が泣き顔に変わるだろうと、ルカは愉快な気分になった。