ディノヒバ
□日常に溶ける愛情
1ページ/2ページ
コツコツと足音を響かせながら、ディーノは目的地への道をゆく。
一週間ぶりの愛しい姿を早く見たいと、速度があがっていくのは気にせずに。
日常に溶ける愛情
「恭弥!」
バタン!と派手な音と声に恭弥はちらりと音源を一瞥した後、短く溜息をついた。
「・・何の用」
「用なんてねーよ。恭弥に会いたかったから来た」
「そう、よっぽどマフィアのボスって暇なんだね」
久々の逢瀬も関係なしに冷たくディーノをあしらった恭弥は、それ以上ディーノに視線を向けず、書類に目を向けている。
しかしそんなことは気にせずに、ディーノは恭弥の後ろに回り、そのまま抱きしめる。
「ちょっと、何」
「いやー、久々に会ったし?」
「理由になってない。離して」
「嫌」
にかりと笑って、抱きしめる力を更に強めると、恭弥は眉根を寄せて溜息をもう一度ついた。
「恭弥の髪って綺麗だよなー、さわり心地いいし」
そんなことを言いながら、ディーノの手は恭弥の髪を梳く。
さらさらと揺れる黒は美しく、ディーノは笑みを深くしながら更に手をすべらせて、恭弥の頬をするりと撫でた。
「・・・・・」
パサ、と音を立てて、恭弥の手中にあった書類が机の脇へとずらされた。
「お、終わった?」
「集中できないから明日やる。僕はもう帰るよ」
「じゃあ飯食いにいこーぜ。夕飯まだだろ?」
「・・・ハンバーグ」
「わーった!」
にかりと笑ってもう一度、今度は撫でるように髪に置いた手は振り払われてしまったけれど。
こうして抱きしめさせてくれるのも、誘いに乗ってくれるのも、全て自分だけなのだろうと思うと、ディーノは言い知れぬ優越感に満たされた。
next→あとがきと言う名の言い訳