ディノヒバ

□日常に溶ける愛情
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コツコツと足音を響かせながら、ディーノは目的地への道をゆく。

一週間ぶりの愛しい姿を早く見たいと、速度があがっていくのは気にせずに。


日常に溶ける愛情



「恭弥!」

バタン!と派手な音と声に恭弥はちらりと音源を一瞥した後、短く溜息をついた。

「・・何の用」
「用なんてねーよ。恭弥に会いたかったから来た」
「そう、よっぽどマフィアのボスって暇なんだね」

久々の逢瀬も関係なしに冷たくディーノをあしらった恭弥は、それ以上ディーノに視線を向けず、書類に目を向けている。
しかしそんなことは気にせずに、ディーノは恭弥の後ろに回り、そのまま抱きしめる。


「ちょっと、何」
「いやー、久々に会ったし?」
「理由になってない。離して」
「嫌」

にかりと笑って、抱きしめる力を更に強めると、恭弥は眉根を寄せて溜息をもう一度ついた。

「恭弥の髪って綺麗だよなー、さわり心地いいし」

そんなことを言いながら、ディーノの手は恭弥の髪を梳く。

さらさらと揺れる黒は美しく、ディーノは笑みを深くしながら更に手をすべらせて、恭弥の頬をするりと撫でた。


「・・・・・」

パサ、と音を立てて、恭弥の手中にあった書類が机の脇へとずらされた。


「お、終わった?」
「集中できないから明日やる。僕はもう帰るよ」
「じゃあ飯食いにいこーぜ。夕飯まだだろ?」
「・・・ハンバーグ」
「わーった!」

にかりと笑ってもう一度、今度は撫でるように髪に置いた手は振り払われてしまったけれど。


こうして抱きしめさせてくれるのも、誘いに乗ってくれるのも、全て自分だけなのだろうと思うと、ディーノは言い知れぬ優越感に満たされた。







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