□眠れ僕の君
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どうして、こんなに眠いの

どうして、こんなに眠ってはいけない気がするの


どうして、こんな。



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事が起こるのはたかだか数十分前のこと。

私は並盛中風紀委員長の雲雀恭弥と数週間前からつきあっている。

最初頃の恭弥はとても私に優しくて、たくさん話もしてた。
最近だってもちろん優しいけど、素っ気ない気がする。
もしかしたら、書類整理やら町のことやらで忙しくて疲れているのかもしれない。

でもやっぱり私は恭弥には構ってほしいから、一緒に帰ろうと誘ってみるけれど


『恭弥?…ねぇ?』

「…」

『恭ー弥ぁー?』

「……」

『ちょっと…』


話が聞こえてないみたいに、返事を返してくれない。
何か考え事しているのか、応接室の椅子をキィキィ、とならしながら真剣な顔をしている。
思いついたようにパ、とこっちに視線を向けた。


『あ。…恭、』

「ナマエ、僕の家にこない?」

『えっ?…、家ッ!?』

「嫌?」

『う、ううんっ!!いきたいっ』

「よかった。じゃあ行こう、バイクあるから」

『…やっぱバイクなんだね』


中学生なのに…とかわいた笑いをもらしてから一緒に応接室から出た。

このとき、後ろで恭弥が企むように笑っていたことを、私は気づくべきだった。
恭弥の瞳を見たとき、その内にある企みに気づくべきだった。

バイクに跨りほんの10分程度すると、住宅街では浮いてしまいそうな大きな家の前で止まった。


『な…大きい…ここ!?』

「そうだよ、大きいかな…まぁ1人で暮らすには十分過ぎる広さにはなってるよ。」

『親は?』

「金だけ貰って別居してる。」

『恭弥って凄いね…!』


さ、入ろう。と指紋で扉を開けた。
セキュリティーが凄いハイテク…さすが恭弥だ(笑)
中も綺麗で清潔感があって無駄な物も少ない。
リビングに入るとソファーに座って、と言われ大人しく座った。


「お茶と紅茶、どっちがいい?」

『ん?…んー、紅茶かな。砂糖いれてねっ』

「ふ、…わかってるよ。」


恭弥が優しく笑ってキッチンへと向かった。
オープンキッチンで恭弥の胸の少し下くらいまでが見える。
なんだか新婚さん気分…でも夫と妻が逆?なんてクスクスわらってると恭弥が2つカップをもってソファーに座った。


『ありがとっ…』


一口飲むだけで口の中に紅茶の香りが広がる。
今まで飲んできたどの紅茶より香り高い素晴らしいものだというのが分かる。


『おいし…凄い、香り高いね…』

「なにかわかる?」

『これだけ香ってれば誰でも分かるよ…ダージリン…凄く美味しい』

「当たり。入れ方にも気を使ったからね…紅茶はただ入れるだけじゃなくて、時間とかそういうものに気を使えばこんなに香りがたつ。
気に入ってくれたみたいでよかったよ」


そういってから恭弥も自分の分をゴクリと一口飲んだ。
しばらく二人で紅茶をしながら話していると、楽しいのに、昨日ちゃんと寝たのに、急に何故か、眠くなってきた。


『あ、れ…?…』

「…どうしたの?」

『…なんか、眠…い…』

「寝てもいいよ」

『せっかく、恭弥の家にきたのに…寝ちゃう…なんて、いや…』

「大丈夫、自分の家だと思ってゆっくり…眠って…」

『恭弥……、』

「おやすみ、ナマエ…



永遠に。」


永遠に。そう続けた恭弥の声がぼやけた私の脳へ、緩やかな麻薬のように甘く微かに響いた。
そのまま、私は、


「ナマエ…愛してる…」


おやすみ、おやすみ。

永遠におやすみ。

愛してる、愛してる。

永遠に愛してる。

深く長くどこまでも愛してる

深く長くだれよりも愛してる

だから君が他の奴と話すなんて

許せないから。

眠らせて僕だけの君にした。


誓う、君を、ずっと。



僕のものに。





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