短
□呪いの本
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キィイン…
ああもう…耳鳴りがうざったい…。
最近耳鳴りが酷い、学校でも、家でも。授業中だろうとずぅっと奥で鳴る。
イライラいらイラ。
うざったい、うざったい、うざったい、うざったい、うざったい!!いまは授業中なのに私は声を出した。
この耳鳴りを消すかのように。
『あーあ−嗚ーあーアーあーあー。』
皆の視線が私に集中する。
それでも私は言い続ける。友達が私の名前を呼ぶ。私は止まらず言い続ける。次は隼人が言ってきた。
「…ナマエ」
耳鳴りは止まる。
隼人に名前を呼ばれただけで耳鳴りは止まった。
『アリガト、ハヤト』
「いや。いいから前見やがれ」
大好きな隼人。助けてくれる隼人。愛してる愛してる愛してる。
世界で一番大好きな人。
私は気付かない。
大好きだから。
─────
大好きなナマエ。
俺はナマエが好きだ。
ある日俺は十代目への参考書を買いに本屋へ足を進めた。
参考書がある戸棚を見ていると、一つだけ参考書では無い本があり、その本はタイトルが何もない真っ白な本。
誰が書いたかも、なにもかも分からない真っ白な本。
興味本位で手に取ると、その瞬間俺の周りの音が全て消えた。ドクンドクンという自分の鼓動の音だけが聞こえ、手は自分の物で無いかのように本を開けようと動く。
開けたいが開けては駄目なような気がする。
けれど俺はその本を開けた。
中は真っ白。
俺がパラパラと本をめくると、文が見え、その文を読んだ。
─大好きな人を自分の物にする方法─
だった。
覚悟のできた方は次のページへ…と書いてあったから俺は迷わず次のページを捲る。
─まず、貴方の好きな人を頭に思い浮かべて下さい。
そして、思い浮かべたまま下に細長い四角があるので、そこに好きな人の名前を書き込んで下さい。
これでお終いです。─
俺はそれを読んでから本を手に、レジへ行き会計を済ませて店を出た、十代目には謝罪メールを送り自分の家へ。
俺は部屋の鍵を閉め、買ってきた本のあのページを開けてペンを用意し、ナマエを思い浮かべながら空白欄にナマエの名前を書き入れた。
が、何も起きない。
なんだよコレ使えねぇ。
そして、本を適当に置いて俺は眠りにつき、翌日……―ナマエは可笑しくなった。授業中だろうと声を出した。
他の奴が止めに入っても止まらない。
見かねた俺が止めに入るとナマエはカタコトながらもありがとう、と言って止まった。
……ナマエは俺の言うことだけ聞く。
俺の、ことだけな。
「ナマエ」
『なに、隼人』
「今日空いてるか?」
『うん、大丈夫だよ』
「じゃあ…放課後、一緒に帰んねぇか?」
『珍しいね、いいよ。じゃあ放課後』
「ああ」
今日、やっとナマエが俺だけの物になる。
さて、放課後まであと1時間…────
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