□幻覚の国のアリス
1ページ/1ページ



私だけのかわいいナマエ。
小さくて可愛い私のナマエ。さぁおいで…私の元へ…ここは私が創った不思議の国。迷い込んだ貴方は私のアリス。
さぁ…来て頂戴…

──────

たたたたた


可愛い足音が暗闇の世界に響き渡る。
真っ暗闇の世界で一人の少女は息を切らせながらも止まらずに走っていた。


『はぁ、はぁ…はぁッ!!』


少女は真っ暗闇を走り、走り、走る。行く宛なんて物はとうの昔に捨てた。
ただある日何時の間にか暗闇にぽつんと寝かされていて、そっから出口を見つける為にただ走り回っているだけ。不思議なのはずっとずっと走り回っているのに、お腹だけでなく喉も渇かない。
息切れ状態なのに全く喉は渇いていなくて、とても不思議。
何日も何日も何日も食べも飲みもしていない。空腹なんて無い。
ただ息切れするばかり。
そして疲労は感じるのに足の痛みは感じない。
今のナマエに感じる事は息切れとイライラと疲れのみ。
寝たいと思っても寝れない…走らなくなった時は突っ立っていたり、ぼーっとすることばかりで何もすることがない。それはまるで飼われているよう。暗い箱の中でただ走って、疲れてぼーっとして、空腹と喉の渇きはしなくて、なにも出来なくて。
不思議な位真っ暗な世界で既に平行感覚が無い。意識がぐらぐらして真っ直ぐ走っているのか、曲がりながら走っているのか…自分じゃ分からない。
ただ少女が考えてる事は『走らなくてはならない』ただただ走らなくてはならないと考える少女はもう精神は崩れている。
前まではこんな目に合わせている奴を殴ってやりたいと思っていた。けれどその感情は消え去り、ただ走らなくてはならないと考える。


『はぁはぁっ、はぁ…っ走らなきゃっ…走らなきゃ…っはぁ!!』


たたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたタタたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたタたたたたたたたたたたたたたたたた。


『走らなきゃ走らなきゃ走らなきゃ走らなきゃ走らなきゃ走らなきゃ走らなきゃ走らなきゃ走らなきゃ走らなきゃ走らなきゃ走らなきゃ走らなきゃ走らなきゃ走らなきゃ走らなきゃ。』


呪文のように言いまくる少女はもう息切れなんかしていない。
走る事のみを望む人形のように少女は走る。
少女は夢を見ているのです、永遠の悪夢を。
終わることなき地獄の悪夢を。
肉体はそのまま動かず監禁され、精神はクローム髑髏の手によって監禁されている。
少女が脱出することは許されない。

──────


私のナマエ、大好きな大好きなナマエ。

もっと迷って

もっと漆黒に堕ちて

もっと世界に染まって

私のものになって。

私の黒い感情はナマエが作ったの…
可愛いアリスは手に入れたい。
骸様もナマエの事が好き、だから私が…ナマエを私だけのものに。


「迷って、崩れて私のアリスになって…」


大好きなナマエ。
あなたは私のアリスだから…。


end
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ