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□雪の日アイス
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春夏秋冬の中で一番寒いこの時期、2人の男女は暑かった。
むしろ暑苦しかった。
サウナと化した部室内は熱気で溢れかえり、1人はそんな中でも運動し、1人は暑い暑いとアイスを頬張る。
『……ちょっと。笹川センパーイ…』
「なんだ!ナマエ!」
暑いんですけど。とタオルで汗を拭きながら笹川了平に訪ねるナマエ。
笹川は極限に気合いだ!と叫ぶように声を張り上げた。
答えになってない応えに深いため息をついて再びアイスを頬張る。
『ん、…冬に暖房のない部室でアイスってなんか変…』
「暖房をかけずとも熱気で暑くなるのだからな!必要ない!」
『1人の熱気で冬の部室が夏のように暑くなんのは笹川先輩だけですよ、きっと』
早口に疑問符をつけずそう告げると、食べ終わった棒アイスの棒をゴミ箱に放り込み、部室の冷蔵庫へ向かった。
ガラリと冷凍庫をあけるともう一本アイスを取り出す。
「むっ!?まだ食うのか!?」
『食べないとやってらんないッスよ』
「体重が増えるぞ!」
『女のコに対してそれはひどい!汗かいてますもん』
「運動した汗と暑さで出る汗は違うのだ!運動しろ!貴様もボクシング部員だろう」
『んぇえ…、わかりましたよ…でも練習は好きじゃないんでスパーリングしません?』
試合か?無論だ!とリングにあがる笹川に、ナマエも手際よくグローブをはめてあがった。
『よろしくお願いします、先輩』
ナマエに笹川は屈託のない笑顔で応え、スパーリングが始まった。
右、左、正直過ぎる笹川の攻撃。
冷静な状態にあればナマエは案外強かったりするのだが、内心はそう易々ということをきいてくれない。
『っ…
(正直、だなぁ…この人は。本当に正直な人だ…、だからこそ苦手だな)』
「…拳を交えれば他人の考えていることがわかる。
っ、ナマエも例外ではないのだぞ?」
『!』
動揺したのかナマエのスピード一瞬落ちて動きが鈍り、そこに笹川のアッパーがくりでる。
あたる、と反射的に目を閉じそうになるが無理矢理視線を笹川の目とかち合わせた。
『(、…ーーーー)』
……三…二、ビタ。
笹川のアッパーがあと1pの所でギリギリとまった。
ほっと安堵し、視線を逸らしてコーナーに戻りながらグローブを外すナマエとほんの少し顔が赤い笹川。
「ナマエ…今、…」
『…気づきましたか。わかると、いったので、わからせてみました』
えへ、と振り返るナマエ。
「っ、俺もだ!ナマエっ」
『わぁっ!だっ、抱きつかないでください先輩っ!!』
「す、すまん、思わず!」
ぱ、と離れて赤い顔を誤魔化すように、二人そろって背を向けた。
『(、…好きです)』
そう思ったのはきちんと伝わっていたようで。
ナマエはもう一度冷凍庫へ手を伸ばす。
『…っあー…アツいアツい。』
外では雪が降りだしていた。
end