□君の食べかけクッキー
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『〜…ちょっと待っててね、骸』


そう言って部屋を出て行った彼女は僕の恋人。

僕と付き合い始めてから初めて僕を自分の部屋に招待してくれた。
正直嬉しい、自然に頬が緩むのがわかった。
少しの間まっていると、がちゃりと扉が開き、お茶とお菓子の乗ったまるいお盆を持ったナマエが入ってくる。


『お茶、麦茶でよかったかな?』

「大丈夫ですよ」


はい、と僕の前にお茶をおき机の真ん中にお菓子を置いた


『じゃあ、勉強の続きしよっか』

「はい。」

『「………」』


再び無言の時間。
いまさっきナマエが部屋から出て行ったのはただ、ただ喉が渇いたり、僕に気を使っただけではない。
一番は、

気まずかった、それが理由だと思う。

あ、と呟くナマエに僕は下げていた顔を上げた。


「どうしました?」

『え、ああ…音楽かけてもいいかな?』


そういって苦笑いするナマエに僕は同意の意味を込め、微笑みながらはい、と頷いた。

ナマエはそそくさと携帯をいじり、音楽を流す。


♪〜〜♪〜♪〜〜♪〜…

庭園をイメージさせるきれいな音の流れは風の波に乗り、自然に僕の耳に入った。
旋律は部屋をいっぱいにし、気まずい雰囲気は消え失せる。
ふと視界に入ったクッキー。
僕はじっとそれをみた。

それに気付いたナマエが声をあげる


『?…あ、食べていいよ。
私が作ったんだけど…』

「ナマエが…?
…いただきます」


さくッ…

そとはサクサクした生地で中はしっとりとしている。ほんのりとしたチョコレートの甘さは僕好みに作ってくれたのだろうか。
こんな美味しいクッキーがあったとは…。

嬉しさを噛み締めていると視線を感じた。
前を見ると、こんどはナマエが心配そうにこちらを伺っていて、どうやら僕の口に合うかを心配しているみたいだ。


「美味しいですよ」


微笑みかけながら言えば、ナマエはそっか!!と笑い、自身もクッキーを一口食べる。


『うまく焼けてる〜♪』


嬉しそうにもう一口。
ちょこちょこ食べるナマエはハムスターみたいで見ていて面白い。
ナマエの手に持っているクッキーに目が行く。
色が違う。
やはりさっきのは……クフフ、なかなか嬉しいことをしてくれる。

あれは甘さ控えめでとても僕好みの味になっていた。
ナマエは甘党、裏付けるように甘さ控えめのチョコクッキーには手をつけていない。
つまり、あのクッキーは僕のために、別で作ってくれたもの。


「ナマエ、そのクッキーは味違うんですか?」

『うん、バニラ味。
一口味見、する?』


なんちゃって、とふざけるナマエはとても可愛い。
自分からいったくせに顔を赤くさせているのがまた可愛い。


「します。」

『…っえ!?』


がし、とクッキーを持ったナマエの手を掴み僕の口元にもって行き、

サク、


「…美味しいですね」

『…、……っ!!』


ペロ、とナマエの指を舐めてからいえば、ナマエは呆然としたあと、起きた事態を理解したのか徐々に顔を赤くさせた。


『む、くろ…っ!!//』

「さぁ、勉強の続きです。まだ全然できていないんですよ」

『……っうん//』


いつの間にか終わっていた音楽。
ナマエは新しい曲もかけなくて、また沈黙が流れたけれど、その沈黙は別に悪い沈黙ではなかった。


君の食べかけクッキー
((手が震えるよ…//))((少し無理をしましたかね//))


end
お題提供→殺し屋アリス
 

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