性格の悪い悪魔

□悲劇の開幕
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誰もいない8時25分の並盛中学校校門前には、並盛の制服を身に纏った女子生徒が立っている。


『…ここが並盛中学校、ね。』


その女子生徒は冷たい瞳で忌々しげに並盛中学校を睨み付けた。
ふと、いつの間にか握りしめていた手の力に気づき、ゆっくりと息を吐き出す。そんな女子生徒の空気を感じとることなく澄み渡った青空に、優しく緩めた視線を移した。


『…私、頑張るから。美沙希も頑張ってよ…』


前を見て女子生徒、真璃亜は強く足を踏み出す。

この並盛中学校を地獄へと変えるため。


──────────

校内に入り、掲示板を一瞬見て真璃亜は職員室へ向かうと幸い近くにあったため、職員室のドアをノックして開け、中に入った。
予め学校の人間は確認済みであり、すぐさま2−Aの担任を見つけ出し呼ぼうかと思うも、初めてここに来た転校生が知ってるのも可笑しいかと考え直し、真璃亜は知らない振りをして話しかける。


『2−Aの担任の先生をお願いします。』

「ああ、転入生だね。私だよ」


軽く会話をし、クラスまで一緒に歩いていく。
いいクラスだから大丈夫だよ、と口で言いつつ全く真璃亜と目を合わさないのを見れば、前にいた転校生であり真璃亜の親友である美沙希が、虐めをしていた、という嘘を信じ、知っていたのだろう。
本当はある女に嵌められただけ、という事は知らないで、都合の悪い事は排除するやり方。
真璃亜は僅かに足を遅めると担任の背中を冷ややかな黒の瞳で睨みつけた。

クラスの前に着くと呼んだら入ってくれと指示をされたため、呼ばれるその時を待つ。
入れという命令形で呼ばれ若干顔を歪めつつ、クラスの中へ入ると可愛い、という声が聞こえ、真璃亜は黒の瞳を更に黒く染め上げる。
まぁ君らみたいな馬鹿と比べればね、と口が滑りそうになるも冷静を保った。


「名前を、」

『私の名前は冬輪路真璃亜です。取り敢えず、……宜しくお願いします』


淡々と抑揚なくぶっきらぼうに挨拶をすると、言葉を遮られた担任の先生は目を細め顔を歪めると、口を開く。


「…コラ。冬輪路、取り敢えずってなんだ?ちゃんと仲良くするんだぞー」


表面上は和やかに言葉を綴るも先生の目は僅かに怒りを含み笑ってない。
どこかピリピリとした空気が包むのも無視して真璃亜はちらりとクラスを見渡す。


『先生、私の席どこ?』


ちらほらと数カ所にある空席を見つめつつそう聞くと、担任は息を吐きあそこだと窓際の空席を指差したため、指定された席へ向かって行く。
途中不自然さのないように周りを確認しながら。
座ってから意識のみ隣の席の沢田綱吉に向かせる。
事実を見抜けなかったボンゴレの成り下がりに真璃亜は不愉快を感じ、苦しんで死ねと頭の中で暴言を吐いていると、暴言を向けられていた本人が話しかけてきたためそちらを見た。


「えっと…真璃亜ちゃん、これからよろしくね…!」


気安く話しかけるな、名前呼ぶなと再び内心暴言を吐きながらも、真璃亜はわざわざ緩く笑顔を貼り付け挨拶を返す。
それはこれからを示唆した、宣戦布告の挨拶。


『…うん、これからの地獄のような日々の中で、宜しくね?』


2人が話しているのを、黒い感情を含めて神埜姫世が見つめている。
僅かに滲む殺気に気付かない沢田綱吉は疑問を隠す事をせず、キョトリとした表情をして真璃亜を見ていた。


「うん、え?どういう意味?」


これから始まる地獄の日々に、足掻き、もがき苦しみ、絶望に溺れればいい。
微かな希望も見させてより深く絶望を。
地獄に落とすための準備は全て揃える。
悲劇と死を。さぁ、開幕。

真璃亜は俯いて口角をつり上げた。



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