俺は見た。

見たんだよ!!

坂田家の秘密を…!!



――――…



一週間前。


「なに、また来てんの?また仕事クビになったんですか?あなたこれで何度目ですか?あぁん?」

「いやぁ、ちょっとミスしちゃって。」

俺はハローワークに来ていた。

長谷川泰三。

これが俺の名だ。

だが大概みんなは俺をマダオと呼ぶ。

マジで大好きな男って意味らしい。

ま、それはおいといて、また仕事クビになっちまって新しい仕事探してんのさ。

「いい加減にしてくださいよーもう。こっちだっていい人材を紹介しないといけないんですから。」

「そんなこと言わず何かいい仕事紹介してくださいよ。」

「そう言われましてもー…。」

「お願いします!!次こそ頑張りますから!!」

男はため息をつくと、一枚の書類を出した。

「仕方ないですね。この仕事やってみますか?」

「お、どれどれ。」

その紙には使用人募集中と書いてあった。


・男性、女性でもOK
・未経験者OK
・勤務時間6時〜22時
・時給3000円


勤務時間は長いが、なんといっても時給がいい。

それに今はそんなこと言っている場合ではない。

俺は決めた。

「ぜひやらせてください!!」



――――…


午前6時

俺はある家の前に立っていた。

いや、家というよりも豪邸と言ったほうが正しい。

今日からここが俺の職場。

俺は坂田家の使用人になります!!


とりあえず渡された鍵で、門の鍵を開けた。

つか、こんな簡単に鍵を渡していいのかよ。

強盗とかホイホイ寄ってくるんじゃ…

ウィーン。

何かが動いた。

あ、セキュリティーセンサーね。

そうだよね、当たり前だよね。

バカだったよ俺。


ドアまで来ると、指紋認識にかけられた。

あらかじめ登録はしてもらってたため、スムーズに通過。

いよいよドアを開ける。

ガチャ…。

中に入るとそれはもうどっかの宮殿みたいな広さと綺麗さ。

さすが坂田家。

坂田家とは代々国会議員であり、今でもかなりの権力をもつ家柄だ。

それにしてもよく俺なんか雇ったよな。

しかも求人とか出す必要なくね?

金だせばいくらでも優秀な使用人雇えるだろうに。

そんなことを考えながら、仕事マニュアルを開く。

1.玄関、ダイニングの掃除

「掃除ね。」

ちゃっちゃと掃除を済ませ、またマニュアルを確認する。

1.長男、次男、三男、四男、五男、様方を起こしに行く

「まじかよ。しかも男ばっか5人も…。」

2階にあがるとすぐに、長男から順に右にむかって並ぶ部屋があった。

まずは長男からだな。


コンコン。

………。

コンコン。

………。


返事がない。

長男の名前は確か…。


坂田銀時。

次男が十四郎、三男が総悟、四男が退で、五男が晋助。

順に26、24、21、19、18歳だと聞いている。


「銀時様、お時間ですよ。」

………。

声をかけても返事がないので、次男を先に起こすことにした。

コンコン。

「十四郎様、お時間ですよ。」

すると中から声がした。

「あぁ、分かった。」

起きてたのか?

まあいい、次は三男だな。

コンコン。

「総悟様、お時間ですよ。」

………。

返事なし。

コンコン。

「総悟様?」

起きないか…。

そう諦めた瞬間、中から何か音がした。

「あ、起きられました?お時間です…よ」

ガチャッッ!!

ゴッッ!!


え、なに今の。

急にドアが開いたと思ったら何かが頭に当たった。

あ、頭から何か赤い液体が垂れてきたぞ。

って…

「ギャーッッ!!頭にナイフ刺さったーッッ!!」

「朝っぱらからうるせぇんだよ。俺起こすときは死ぬ覚悟で来な。」

ガチャン。

何あの子!!

可愛い顔して超バイオレンス!!

大丈夫なのか、この家は!?

とりあえず血まみれのまま四男の部屋へ。

コンコン。

「はぁ…い。」

意外と早い返事だな。

「退様、お時間ですよ。」

「分かりましたー…。」

多少寝ぼけた声だが大丈夫そうだ。

次は五男。

コンコン。

………。

「晋助様?」

ここも返事なし。

もう一度ノックしようとすると、いきなり四男の部屋が開いた。

「おはようございます。今日からの方ですか?」

黒髪に優しそうな顔。

良かった、普通っぽい。

「おはようございます。ええ、今日から使用人をさせて頂きます、長谷川と申します。よろしくお願いします。」

「こちらこそよろしくお願いします。あの、良かったらこれ使ってください。」

そう言って退様は血まみれの俺にハンカチを渡してくれた。

「あ、ありがとうございます。」

「あと、晋助は銀兄さんの部屋にいますよ。じゃ、学校の支度があるので。」

そう言うと、退様は部屋に戻った。

なぜ晋助様が銀時様と同じ部屋に?

まぁいい、起こすのが先だ。

再び銀時様の部屋の前に戻り、ノックをした。

コンコン。

「銀時様、晋助様、お時間ですので早くお目覚めください。」

………。

それでもやっぱり返事がない。

俺は思い切ってドアを開けることにした。

ガチャ…。

「銀時様?晋助…さ…ま…?」


俺は目が点になった。



大きくて高価そうなベット。

そこに埋もれる2つの影。

「………へ?」

そこには裸で抱き合い、寝息をたてる銀時様と晋助様がいた。

「えーーーーッッ!?」

驚かずにはいられなかった。

なんで裸で!?

兄弟で、男同士で…

「えーーーーッッ!?」

2度目の叫声。

「ん…うる…さい…。」

もぞもぞと動く晋助様に銀時様が抱きつく。

「晋助…。」

「んー…。銀時…朝みたいだ…。」

ゆっくり起き上がった晋助様と目が合う。

「…誰?」

「あッッ、あのッッ、きょ、今日からこの家で使用人をさせて頂きます、長谷川と申します!!」

「あぁ…よろしく。ほら銀時、起きねーと会社遅刻すんぞ。」

「んー…。」

晋助様はベットから降りて、こっちに歩いてきた。

良かった、下は履いている。

しかし安心したのも束の間、すれ違い様にボソッと何か囁かれた。

「そういうことだからよろしく。」


え…。

どういうことッッ!?


意味が分からず戸惑っていると、銀時様もこっちに向かってきて言った。

「そ。俺らそういうカンケーなの。」

そう言い残して晋助様の後を追って部屋を出て行った。

え、そういうカンケー?

…どういうカンケー?





同じ部屋…。


同じベット…。


裸…。


兄弟…。


男同士…。




キュピーン。

俺の頭のなかにある言葉が浮かんだ。

「ホモ…。近親相姦…。」


はッッ!!


ふいに視線を感じ後ろを振り返ると、腕を組み、ドアにもたれかかった総悟様が怪しげな笑みをたたえて俺を見ていた。



to be continue...



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