「席につけー。今日は証明写真の撮影あるからー前の証明写真は提出し…」

「のど痛ぇ。」

教壇に立つ俺を見上げながら高杉は言う。

「だから?」

「のど痛ぇっつってんだよハゲ。」

「ハゲって誰のことだコルァ!」

今はまだ朝の8時45分。

今からHR始めようとしてんのに、こんなこと言われたらやる気なくしちゃうよね。

「保健室行ってくる。」

「おい高杉くん!?」

スタスタと教室を出て行く高杉を追いかけようとしたが、戻ってくる訳がないのでやめた。

「…はーいじゃあHR始めまーす。」

「えぇー!高杉だけサボりアルか?ズルいアル!」

「私も晋助様に付いて行きたいっス!」

「俺もサボらせろや腐れ教師!……って土方さんが言ってやす。」

「言ってねぇッッ!」

「お前らうるせぇ!HR始めんぞ!」



――――…


キーンコーンカーンコーン

あいつ結局帰りのHRにも出なかったな。

つか、のど痛いので保健室行ってきます☆とか小学生ですかコノヤロー。

「はぁ…。保健室に様子見に行ってくっか。」

教室をでて保健室に向かった。

「高杉ー?」

保健医はおらず、代わりに不在の札がかけてあった。

1つだけカーテンの引いてあるベッドに近づき、もう一度声をかける。

「高杉?」

返事がないのでシャッとカーテンを少し開けると、そこにはスヤスヤと寝息をたてる高杉がいた。

どうせまた携帯でもいじってんだろうと思ってた矢先の出来事に一瞬固まる。

「高杉…?」

何度呼んでも起きる気配はない。

それをいいことに俺は高杉の体を観察し始めた。

「キレーな肌してんなー。」

カッターシャツとズボンの間から見え隠れする肌の色と顔の色が同じで驚いた。

適当に投げ出されている学ランを手に取ると、高杉の匂いがした。

「高杉、高杉。」

優しく髪を撫でてやると、くすぐったそうに首をすくめただけで、また規則正しい寝息をたて始めた。

「うふ、可愛いから許しちゃう〜…って…んなワケあるかァアッッ!!」

ガッターンッッ!!

「ぬわっ!?」

近くにあったテーブルをひっくり返すと、高杉が飛び起きた。

「何なの高杉は!!俺の前からいきなり消えて保健室でお昼寝!?ヒドいッッ!!ヒドいよ、ねぇヒドくないッッ!?」

「うるせーんだよテメェッッ!!」

いきなり起こされ、不機嫌な高杉を尻目に俺はカーテンを開けた。

「のど痛いとか見え見えの嘘ついてんじゃねーよ。」

「なに真面目になってんだよ腐れ天パ。」

「だいたい君はねぇ…」

「あーダリ。」

高杉はすたすたと保健室を出て行った。

「ちょ、高杉待ちなさいっ!あだっ!!」

さっきひっくり返したテーブルに引っ掛かり、なんとか体勢を整えるのに必死で高杉を追いかけることができなかった。

あいつ足速ぇしな…。

「よいしょっと。ん?」

俺も保健室を出ようとした時、あるものを見つけた。

「こりゃあ…。」

ベッドの上に残されていたもの。

それは…。

「ぷぷっ。アイツ目ぇ半開き。」

証明写真。

高杉の。


アイツこれ見せたくなかったからサボったのか?

どっちにしろ提出しなきゃなんねーのにバカだなー。


それをポケットに突っ込んで俺は保健室を出た。


くそーやっぱ可愛いぜ(笑)



END.



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