「銀時…今夜は…たくさん…愛して…。」
「晋助…。」
ゆっくり伏せられた目。
薄く開いた唇が触れ合おうとした。
が、
「たいへーんッッ!!大変大変大変大変んんッッ!!」
廊下から慌ただしい足音と共に現れたのは、四男の退。
いい雰囲気をぶち壊された2人はもちろん…
「…おい…。」
「へ?」
「いいとこだったのに…邪魔してんじゃねーよッッ!!」
「ぎぃゃゃやあッッ!!」
制裁を下した。
――――…
「それで?何が大変なワケ?」
PM:8:15
坂田家御子息5人は、リビングに集まり、会議を開いていた。
てかなんで家政婦の俺まで召集されてんの?
「早く言えよ退。」
晋助様…仮にも兄上になんて言い方…。
しかも呼び捨て?
退様は下を向いていた顔を上げ、口を開いた。
先ほど殴られたあざが痛ましい。
「実は…明日…父さんと母さんが帰って来るんだ…。」
ピシッ。
そんな効果音と共に、他4人の動きが止まった。
いや、俺も。
「さっき電話かかってきて…。」
「なんだってこんな急に…。」
「うわ、めんどくせー。」
あからさまに皆さん嫌顔。
いや、めんどくせーのは俺の方だよ。
家の中、いつも以上にピカピカにしとかないといけないパターンじゃん。
もう時間ないじゃん。
オジサン泣きそうだよ。
「長谷川さん、親から連絡もらってなかったの?」
うなだれていると、銀時様に話し掛けられた。
「いえ…何も…。」
「そっか…。」
ただいまのリビング、非常に重い空気でございます。
すると銀時様がすっくと立ち上がり、指示を出した。
「弟たちよ!!」
なにその言い方。
「俺と晋助、トシと総悟の関係を決して親に知られてはならない!!」
ッッ!!
も…盲点だった。
確かにこのことが知られたらヤバい!!
「関係がバレそうな物は隠せ!!親の前で、間違ってもイチャつくな!!それから今日はSEX禁止!!自分の部屋で寝ろ!!分かったなら各自行動に移れ!!以上、解散!!」
なんて品のない指示。
銀時様の言葉を聞いた4人は、はじかれたように動き出した。
あの総悟様でさえも。
ヤバいヤバい!!
俺も早く掃除に取り掛からないと!!
「…さっきの続きはお預けかぁ…。」
やる気を出した俺の横を銀時様がのっそりと歩いて行った。
――――…
「玄関、廊下よし!!リビング、お座敷よし!!トイレ、バスルームよし!!」
確認を済ませると、身だしなみを整えた。
AM:10:02
兄弟5人は、リビングに集結し、旦那様たちの帰りを今か今かと待ちかまえていた。
ソファーに腰掛ける晋助様を見ると、いつもつけているお揃いのリングネックレスを外していた。
銀時様も同様。
総悟様は不機嫌オーラを放ちながら、晋助様の横に座った。
十四郎様はコーヒーを飲みながら、新聞を読んでいる。
あの…新聞逆さまです。
退様は青ざめた表情で、窓から外を窺っていた。
よほど緊張しているのだろう。
でもね、俺もさっきから手の震えが止まりません。
そんな張り詰めた空気の中、退様が言葉を発した。
「来たよ…。」
外を見ると、門を通ってこちらに向かってくる黒い車がぼんやりと映った。
to be continue...