カタン、カタン…
あ…またいる。
俺の知らない制服を着た、同い年くらいの君。
向かいに座った紫色の髪を見たのは3度目。
PM:6:30の電車。
今日もまた下を向いて本を読んでる。
毎回何読んでんだろ。
あ、あくびした。
目立たないのに、近寄りがたいオーラを出しているのはその儚さゆえなのか。
やべっ、顔上げたし。
思いっきり目線をそらした先には、俺の好きなバンドのライブの広告。
ライブかぁ…行きてぇ。
――――…
流れる景色を背景に君がいた。
俺が乗り込むと、いつも先にいる。
きっと乗車駅は俺より前。
いや絶対(笑)
うっすら目を三日月にしてページをめくる。
あーあ。
なんかいいよな。
俺の周りにあんなヤツはいない。
カタン、カタン…
話しかけてみようか。
電車が停車した。
スッと立ち上がると、そのままドアに向かって歩き出した。
やっぱ無理だわ。
俺実はチキンだし(笑)
開かれたドアから流れ込む風に髪がなびく。
あ…
一瞬、
俺に見せた顔は、目は、あの時の…。
ドアが閉まり、君は見えなくなった。
あれは…
ページをめくる君のカオ。
動き出した電車の中でひとりニヤけるのを必死にこらえる。
君は、俺より先にやって来て俺より先に消えていく。
早く、明日になって。
また、そのカオ見せて。
そんなことを思う電車の中。
カタン、カタン…
カタン、カタン…
END.