おやこのおはなし

□おやばか
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みー、みー、

仔猫を撫でると
小さく鳴いた



「これ、たべるかな?」

半分食べたチョコレイトを
そのまた半分に割ると


「おいで」


抱えた仔猫の口元に
そう、と近付ける



ぱしんッ、
何かが飛んできて



「わわッ!」

尻餅を着いた拍子に


ぴょーん、と仔猫が駆けて行く



「チッ、惜しかッたな」
「あ…」



振り返ると
あの不思議な部屋に居る
怖そうなお兄さんが


石を持って立っている



「チョコなんてやッたら動物虐待だよ?わかッてんの?」

どーつぎゃく…ん…?


ふるふる、と首を振る



「猫は石をぶつけると面白い」


すまし顔を
にっ、とすると

仔猫の居る場所に狙いを定める



このお兄さんは、西くんは始めから…


「かわいそうッ!」


たたッ、近くに寄ると抗議する



タケシは沢山の

哀しかった事や痛かった事、怖かった事を思い出す



石をぶつけられそうになった仔猫と

きんにくらいだーと出会う前の自分が重なる



「うッうッ…」

「ッんだよ、泣くなよ」


大きなお兄さんに意見をするのは怖くて膝が震える


でも、強くならなくちゃ


きんにくらいだーに近付く爲にも



小さい手を
きゅッ、と握り締める



「もうねこを…ううッ…じめな…ヒック…ください…ッ」

「わかッたよ、じゃあな」


西くんはタケシの頭に軽く手を置くと

何処かへ行って仕舞った







***************



木陰で一部始終を見ていた風は

タケシの成長に目頭が熱くなる



「タケシ…お前は強くなりよッた…」



さあ、
タケシを迎えに行って沢山誉めてやろう







おしまい



「ママーあの人何してるのぉー?」
「しッ!見るんじゃありませんッ!」




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