おやこのおはなし

□きょうからおいしい
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ぷるぷる
つめたくて甘いプリン



きっとタケシも好きだろう




手に下げられた小さな袋が
風には幸せのアイテムの様に感じられて

足取りが軽くなる






「タケシー、おやつたい」

絵を描いているタケシを呼ぶと

「はい」

にこり、
愛らしい笑顔で寄ってくる


コンビニ袋から
甘い玉子菓子を取り出すと

サッ、とタケシの顔が青ざめる



「どげんした?食べなかんか?」


きゅッ、とスケッチブックを抱き締めたまま俯いて仕舞う


風はタケシを安坐の中に
ちょこん、と納めると



「すかんなん?」



頭を撫でながら
不安そうな顔で訊ねる



しかし、タケシの頭は

ふるふる、左右に揺れるだけ



アレルギーはなかった筈だ
下の黒いのが嫌いなのか?



タケシにこんな顔をさせるつもりはなかった



「どげんしたと?」



見上げる顔には怯えの色
ぽつり、呟く



「きんにくらいだー…あのね…」



部屋に来る前の出来事を

目にいっぱい涙を溜めて話し出す


口にするには
恐ろしい体験だろうに…


怒り、赦せない気持ちを
どうにか鎮める


今はタケシを安心させる事が優先だ



「もう大丈夫たい…ッ!」



小さな躯を抱き締めると
涙が溢れる



「うッうッ…タケシ…ッ」


ああ、タケシの前で泣いて仕舞った



「きんにくらいだー?」


小さな手が風の涙を拭う


何と優しく暖かいのだろう



「タケシ、これからは幾らでも安心してから食べてよかッたい…ッ」

「いいの?」

「よかたいッ!よかたいッ!」




ぷるぷる、

緊張した面持ちで口に運ぶタケシを

心の中で
手に汗握り応援する



「うッ…うまかと…ッ?」


こくり、頷き
にこッ、と笑うと



プラスチックの匙に乗った
黄色が風の口元に運ばれる



ぱくり、

タケシの笑顔ごと
美味しい味がした









おしまい



「タケシー、プリンば買ッて来たばい」
「はい…」


毎日ぷッちんぷりん

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