九龍文庫之間
□黄龍妖魔學園紀
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黄龍篇〜双龍の再会〜
「……コートにサングラスに革手袋で、全身真っ黒。何か、危ない職業の妖しい人みたいだな。」
それが、数年ぶりに会った壬生に放った龍麻の第一声だった。
「まさか、マト〇ックスとかのコスプレか?」
「龍麻………」
離れていた時間が長かったせいか少しばかり緊張した面持ちな壬生に、龍麻は昔と変わらないその口調で、遠慮がちな空間を一瞬で埋めてしまった。
「君、あまり人の事は言えないんじゃないかな?君のその格好の方が余程コスプレだと思うけど。」
そのペースに心地よく引き込まれた壬生は、目の前の龍麻に視線を落とす。
「これは……いろいろ事情があるんだよ。」
出会った頃と変わらない詰め襟に身を包んだ龍麻は照れ臭そうに赤くなった。
「大丈夫。似合ってるよ?まるであの頃のまま刻が止まったみたいだね。」
「似合うって言うなよ。さすがにこの年齢で学生服着るのは、恥ずかしいんだぞ……」
「そうは言っても、普通に着てるじゃないか。」
「本当の俺の年齢を知らない奴らの前だから平気なんだよ。」
「どうせ、君の事だから…またお人好し振りを発揮して面倒事に巻き込まれたんだろうけど、ね。」
「俺、そんなにお人好しじゃないよ。」
「そうかな?でも、あまり……僕に心配させないで欲しいよ?」
「ご、ごめん……」
「それに……」
「うん?」
「久しぶりに会ったっていうのに……君、素っ気なくない?僕が会いに来たのは迷惑だったかな?」
本来この天香という高校では寮を含め、學園関係者以外の部外者の立ち入りは堅く禁じられている。
もし、不法侵入である壬生が見付かれば、処罰を受けるのは龍麻の方だろう。
「……そんな事ないよ。」
「本当に……?」
壬生の心を見透かした様に龍麻は優しく微笑う。
「うん、嬉しいよ。紅葉に会えて……」
龍麻のその言葉で、壬生もまた、笑顔になった。
そして、両腕を龍麻の方へ伸しその身体をすっぽりと収めると強く抱き締めた。
「……僕も、嬉しい。」
「うん。」
「ずっと君に、会いたかったんだよ。」
「俺もだよ。」
壬生の口唇が、龍麻の髪に口付けようと近付いた。しかし、その動きがハタと止まった。
「…………」
「紅葉?」
黙り込んだまま、動こうとしない壬生に、龍麻が不思議そうな顔で声を掛けた。