東京魔人學園〜双龍之間

□告白
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ひんやりとした空気が、白い光を優しく包む日曜の朝。
壬生は書棚から本を引き出すと、ゆっくりとページをめくり読書を楽しんでいた。
拳武館高校暗殺組に籍を置く彼は、他者との関わりに一線を引いていた。
―何を話せばいいのかわらない。同世代の彼らが興味のある事に壬生は興味がないし、共通の話題なんて持てるはずがない。
暗殺者である自分と関わる事で、他者にどんな災いが降りかかるかわからない。
だから―
彼はあえて闇の世界に身を投じていた。
学校と病院以外で日中に訪れるとすれば、この図書館ぐらいだろう。
特にひとが少ない日曜の朝。
柔らかい光に包まれていると、ふと彼―緋勇龍麻を思い出し、頬の緊張がゆるんでしまう。
端正な顔立ちの中に浮かんだ笑顔は何とも色っぽく、彼の男っぷりを何倍にも引き上げていた。
「おはよう 紅葉」
すずやかな声と共に、背後から抱き締められ、壬生は思わず声を挙げそうになった。
陰(やみ)と対をなすもう一人の龍(じぶん)―緋勇龍麻
「…驚いた…君か?」
今しがた脳裏に浮かんだ龍麻が突然現れ、おまけに背後からから抱きつかれている状況に冷静な壬生の心が揺れる。
「彼らは一緒じゃないのかい?」
落ち着きを取り戻そうと放った言葉の前に、とっときの笑みをたたえた龍麻の顔が近づいた。
「今日は紅葉に逢いたくて…ね」
柔らかで優しい龍麻の笑みが、さらに壬生の心をくすぐる。
「…まるで愛の告白だね。―前に言ったはずだよ。僕は人を殺す暗殺者。君は力で化け物は殺せても人は殺せないと…」
それは龍麻へではなく、自分自身へ言い聞かせるように淡々と重ねられた。
龍麻を同じ闇へ巻き込みたくない。
そんな思いがつい冷たい言葉となって口をつく。
壬生に拒絶され、一瞬曇った龍麻の表情に壬生もまた傷ついてしまう。
―すまない
いたたまれず、席を立とうとする壬生の様子を察して、龍麻は腕に力を入れた。
「共に歩けなくてもいい…僕は紅葉の共犯者になりたいんだ。」
「…共犯者?」
龍麻の申し出に驚かされながらも、壬生は静かに広がる心地よい安堵を感じていた。
仲間でも友達でもなく共犯者になりたいと言った彼の一言が、罪の意識に縛られた心を優しく包む。
龍麻の絡んだ腕をほどくと、彼の正面に身体を向けた。
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