東京魔人學園〜双龍之間

□雨
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数日前、渦王須に体を乗っ取られて以来、体調を崩していた龍麻は、とうとうマリア先生から病院行きを言い渡され、岩山先生の診察を受けていた。
「気の流れは整えたからここしばらく続いていた熱は治まるだろうが、しばらくはおとなしくしてな。」
岩山はやんわりと迫力のある声で龍麻に釘を刺すとにいっと笑った。
「ありがとうございました。」
龍麻は柔らかな笑顔を残し診察室を後にした。
桜ヶ丘中央病院を出ると、外は雨が降っていた。
(しばらく止みそうにないな)
龍麻はすっかり暗くなった空を見上げ、溜め息をついた。
しとしとと静かに冷たい雨が降り注いでいる。
彼は傘をさすと歩き始めた。
ひたひたと歩くその足元には色褪せた落葉が散乱し、冬の到来を告げている。
大通りを過ぎても誰ともすれ違うことなく進んで行く中、一定のリズムで降り注ぐ雨音に、彼は数ヶ月前の記憶のページをめくっていた。
(…あぁ、そうか。あの日は京一達と一緒で、通りの向こうに紅葉を見た気がしたんだった。)
ほんの一瞬見かけだけの壬生の姿を思い出し、龍麻は静かに笑みを浮かべた。
「…今日も逢えるかな」
可能性の薄い偶然を期待して呟いた龍麻の目前に、黒い影がふいに現れ勢いよくぶつかった。
「あっ!」
バランスを崩して倒れそうになった龍麻をその影が掴んで支えている。
「すいません。大丈夫ですか?」
聞き覚えのある声に龍麻は驚いて視線を走らせた。
彼の目の前には逢いたいと願っていた壬生紅葉が、ずぶぬれのまま立っている。
「…紅葉?」
「やぁ…君だったのか」
乱れた髪を整えながら、壬生はいつもの落ち着いた微笑を見せる。期待通りの偶然の訪れに、龍麻はしばらく言葉を失っていた。
だがその刹那、壬生が視界から不意に消え、龍麻の胸元に倒れ込んできた。
「紅葉!」
驚いて龍麻が声を上げる。
「…たいした事はない。今回は少してこずった。少し休めば大丈夫だから。」
冷静に言葉を紡ぐ壬生だが、体が冷えきっているせいか顔色も悪い。
龍麻は彼を支えて立ち上がると、自宅へと急いだ。

自宅に着くと、龍麻は遠慮する壬生をなかば強引に風呂に入れた。
「・・・」
無理やり押し込められた浴室の中で紅葉は立ち尽していた。
優しくされるのは苦手だ。
どうしていいか分からなくなる。
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