東京魔人學園〜双龍之間

□その罪の名を胸に
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『やぁ、紅葉。久しぶりだよね。』

数年ぶりに再会した君は
その笑顔も昔のままで
何も変わってはいないのに

輝くばかりだった
陽(ひかり)の氣だけが

混沌とした得体の知れない
氣に膨れ上がっていた

『黄龍の器は、誰か一人の為に生きたいとか、一人だけを強く想う事は許されなかったんだ……』

君は、相変わらず
何でもない、といった
呑気な物言いで

『でも、止められなくて…もう駄目なんだ。』

君は誰の傍にも留まらず、
誰の物にもならなかった。

『離れたら忘れると思ったんだけどね、紅葉を……』

僕には、双龍という
運命のような、消えない
絆が確かにあったから

それだけにすがっていた
君が、居なくても


龍麻と出会ったあの頃、

沢山の人を傷付けて
その生命を奪っていた

血で汚れて、
怨みで染まっている
僕の手を、

『大丈夫。汚れてなんかいないよ。』

と、微笑ってくれたから
君に許されて救われたんだ


『もう、止められるのは…紅葉だけなんだ。』

君が望んだ事に、僕が
逆らえる筈なんかなくて

昔と変わらないままで
君が微笑うから

泣いたのは僕の方だった

『ごめんな、紅葉。泣かないでよ。俺の最後のお願いだから……』

龍麻のその願いだけは、叶えてあげられなくて

きっと僕は
これから一生泣き続ける

君だけが許してくれた
この罪を背負って

泣きながら

泣きながら

生きてゆくんだろう


ねぇ、龍麻……

もう僕の、この手は
汚れたままで
永久に落ちはしないよ

こんなに重い罪を、
背負う僕を
誰も許しはしないよ

『誰も許さなくても、俺が許すよ。』

と、やっぱり、君は

最後の瞬間でさえ
優しい顔で

静かに微笑って
僕の罪を許してくれた

『ごめんな、紅葉。ありがとう……』

消滅した黄龍の器
もう、君を奪う為に闘いが起こる事は二度とない


ねぇ、龍麻……

君が望んで願った結末は

この世界を救っても

今度は、僕ひとりだけ
救えなかったよ

全ての人々が
君を忘れてしまっても

僕ひとりだけ
覚えているんだから

君が許してくれても
この罪は消えない

僕の手についた君の血は
永久に落ちない

緋勇龍麻という、
罪の名前を胸に刻んで

その愛しい罪を背負って
僕は、この東京(まち)を


彷徨い続ける――








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