東京魔人學園〜双龍之間

□Sweet Valentine's Day
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壬生は言葉もなく、ただ立ち尽くしていた。

そこは、まるで空き巣か何かに荒らされたような、
何者かと戦闘が繰り広げられた跡のような、
見るも無残な光景が目の前に広がっていた。

「これは……酷い、ね。」

出掛ける前には綺麗に片付いていた筈の、その片鱗を見付ける事さえ出来ない。

一体、何が起ったのか?

その部屋に、乱雑に転がっている道具やいくつかの割れた食器、鍋の焦げ跡に微かに混じった匂い。

「……どうやら、賊の侵入や闘いが行われた訳じゃないみたいだけど。」

念の為にと、警戒しながら壬生は、その場所を離れ奥へと向かった。

寝室の前まで進んでみてもやはり外からの、侵入者らしき気配は感じない。
その部屋から確認出来るのは、壬生にとって馴れ親しんだ氣、だけだった。

「やはり犯人は、君なのかな……?」

少しばかり沈んだ氣を感じ取った壬生は苦笑する。

一応、扉をノックをしてみたが返事はない。

「龍麻……」

壬生は、静かに扉を開けて部屋の中を窺った。
暗闇の中、目を凝らすと龍麻はこちら側に背を向けてベッドに寝転がっている。

「……眠ってるのかい?」

声を掛けても相変わらず返事は返ってこない。
壬生は小さな溜息をひとつ付いて部屋から出て行こうとした。と、その時。

「紅葉………」

それは、とても小さくて呟くような声だった。

壬生が振り向くと龍麻は起き上がってベッドの上に座り込んでいた。

「なんだ。起きていたんだね。」

「…………」

声を掛けても龍麻は黙ったまま俯いている。
壬生は部屋に入ると、ベッドの上の龍麻の隣に静かに腰を下ろした。

「龍麻……?」

「……ごめん。台所、あんなにしちゃって。」

「あれは、君がやったんだね。凄い惨状だよ……」

「紅葉、怒ってるよな。」

「片付けるの、大分時間が掛かりそうだね。」

「………ごめん。」

壬生の手がゆっくりと龍麻に伸びてきた。

「え?」

「龍麻、君の……」

龍麻の手を引き寄せ壬生は優しく包み込んだ。

「手、火傷してる。大丈夫かい?痛くない?」

「へ、平気だよ。」

龍麻は慌てて手を退こうとしたが壬生はそれをしっかりと握って離さない。
火膨れして赤くなっているその指先を、優しく労るように、ちゅッと口付ける。

「すぐに、冷やさなかっただろう?」



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