東京魔人學園〜双龍之間

□甘い気持ち
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女の子達から山ほど貰ったチョコを抱えて帰宅すると、程なく携帯が鳴った。
「もしもし、紅葉?うん、もう家に居るよ。うん。じゃあ待ってる。」
龍麻は電話を切ると、キッチンに立ち湯を沸かし始めた。
もう何度目になるだろう。
壬生が龍麻の家を訪れるのも珍しくなくなった。
(今日はダージリン…かな。)
ティーポットを用意する龍麻の顔に嬉しさが溢れている。
(今日は逢えないと思ってたから…lucky…)
テーブルの包みからチョコを取り出し口にほおばる。
生チョコのなめらかな口どけ、控えめな甘さにもうひとつと手が伸びる。
「う〜ん。おいしい。」 思わず声を出してしまう。
(さすが葵 優しくてエレガントな味だ。)
次の包みを開ける。
ネコの形のチョコだ。
「メフィスト…かな。かわいい…」
龍麻の顔がほころぶ。

お湯が沸いたので火を止め、時計を見る。

(…まだかな…)
時間を持て余した龍麻は、次々と貰ったチョコの包みを開けていった。
…時々、味見をしながら…


その頃、壬生紅葉は玄関先で立ちつくしていた。
電話をかけて訪ねると伝えたものの、どうしようかと悩んでしまう。
色々と複雑な事情が重なって作ったチョコ。
せっかくだから甘党の龍麻に食べて貰らおうとここまで来たのだが…
なんだか急に恥ずかしくなってきた。
(……)
時間ばかりがむなしく過ぎる。
ふいに、龍麻の甘い笑顔が頭に浮かび、ドキッとした。
包みをポケットに入れ、呼び鈴をに手をかけると、ドアが突然開いた。
「……」
「……」
お互いに見つめながら、目が点になっている。
「紅葉?」
様子を見に来た玄関先に待ち人が立ちつくしている。
驚きの表情が、柔らかで魅惑的な笑顔に変わる。
「良かった。遅いから来ないのかと心配になったよ。」
いつも以上に寡黙な壬生の腕を取ると部屋に引き入れた。
「すぐお茶入れるから待ってて」
招かれたリビングに腰を降ろす。
目の前のテーブルにチョコを包んだカラフルな包み紙が山のように積み上げられている。
「はい。どうぞ。」
にこやかにティーカップを差し出す龍麻。
(こんなにたくさん食べたなら、もういらないだろうな…)
笑顔の絶えない龍麻と裏腹に、壬生の表情は冴えない。
「なに?どうしたの紅葉?いつもと違うよ。」
心配して覗き込む龍麻の手が壬生の額に触れる。
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