東京魔人學園〜双龍之間

□一番欲しいもの
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龍麻は、目の前に差し出された物に、ひたすら戸惑いの表情を浮かべていた。

「……何だよ?これ。」

「プレゼントだよ。」

「……何で?」

「誕生日だから。」

リボンが掛けられ、綺麗に包装された〈ソレ〉はまだ壬生の掌の上にちょこんと乗ったままだった。

「だから、どうして紅葉の誕生日に俺がプレゼントを貰わなくちゃいけないんだよ。」

「……受け取ってくれないの?」

「そういう問題じゃなくて……」

「君が、僕の欲しい物をくれると言ったから……」

「そうだよ。俺の方がプレゼントする立場だろ?」

「君がそんなに常識的だとは、思わなかったよ。」

「俺よりお前の方がよっぽど、非常識だ。」

会話を交わしながら、壬生が、じりじりと近付く。

「紅葉、いいか?ちょっと落ち着け。」

「僕は先刻から、至って冷静だよ。」

接近して来た壬生の手が腰に掛かると、龍麻は少しばかり狼狽えた。甘い雰囲気に流されると話は曖昧に終ってしまいそうだった。

「……分かった。じゃあ黙って聞け。そこへ座れ。」

龍麻の言葉に、壬生は黙って頷いた後、素直にソファに腰を下ろした。
手にしていた〈ソレ〉はテーブルの上に置かれる。

「今日は4月9日で、紅葉の誕生日だよな。」

こくり、と壬生が頷く。

「俺は、紅葉の欲しい物を聞いたよな。」

再び、こくりと頷く。

「で、お前はこう言ったんだよな。」

――特に用意してくれなくてもいいよ。当日、僕のお願いを聞いて欲しいだけだから――

「俺は、一応……」

龍麻は一瞬、言い淀むと少し顔を赤らめた。

「一緒に風呂に入りたいとか、一晩中……したいとかそういうのは無しって事で承諾したよな?」

壬生は借りてきた猫のように肩を窄めて、やはりこくり、と頷くばかり。

「俺は、紅葉がして欲しい事を何か言われると思ってたのに……」

期待を裏切られたように落胆の色を見せる龍麻に壬生の表情が曇る。

「……俺には結局、紅葉にしてあげられる事なんてないんだよな。」

「…………ッ」

龍麻のその言葉に壬生が勢いよく立ち上がった。

「紅葉……?」

驚いて、龍麻が見上げると壬生は酷く辛そうな顔でブンブンと首を振る。

「…………」

律儀にも黙ったまま、ひたすら首を振る壬生に龍麻は困った顔で、苦笑する。

「しゃべるな、とは言ってないんだけど……」


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