東京魔人學園〜陽之間

□Birthday
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そこここで虫の音が聞こえる。
夕闇の訪れと共に吹く、少し冷たい風が肌に心地いい。
葵の髪がゆるゆると風に舞うさまを見つめながら、彼は葵の後ろに歩を進めた。
ネオンがつき始めた街並みを一望しながらポケットに手を伸ばすと、意を決して葵の首筋から腕を伸ばした。
後ろから伸ばされた龍麻の掌から何か溢れ葵の胸元でキラリと輝る。
小さな青い宝石(いし)のついたオープンハートの首飾り。
「葵 お誕生日おめでとう。」
優しく囁く龍麻に、葵の頬が染まる。
体の向きを変えようと動いた葵を龍麻がぎゅっと抱きしめた。
「…本当は、みんなを巻き込みたくないんだ。葵も小蒔も女の子なんだし…でも、大切な誰かを護るには葵や小蒔の力もいるから…ごめんネ。」
「龍麻…」
抱きしめてくれる龍麻の腕に手を伸ばしながら、葵は龍麻の内なる苦悩を垣間見た気がした。
(あなたの力になりたい。) (あなたを護りたい。)
葵はゆっくり振り返ると龍麻を見上げた。
「龍麻、今日はありがとう。大切にするわ…これも自分の事も。」
柔らかな笑みを浮かべた葵が、うつむいた龍麻の頬に手を伸ばす。
少し背伸びをすると、龍麻の頬にそっと口づけた。
「これからもずっと龍麻の力になるわ。」
癒しの天使は少し力強さを増した笑顔で龍麻を見つめた。
 

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