東京魔人學園〜陽之間

□いつか曇りない笑顔で
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いつもと変わらない、穏やかな微笑みの奥に

寂しさを感じた。

いつもと変わらない、静かなその口調の中に

憤りを感じた。

そんな、気がした。


並んで歩く俺の隣で、
冷たい風に、お前の肩が
少し震えてるのは
寒いからとか、そんな理由だけじゃないって

そんな風に思うのは
俺の気のせいなのか……?

「…なァ、ひーちゃん。」

「ん?」

「お前…本当は辛いんじゃねェか?」

探るように問えば、

「何だよ?京一、いきなり……」

やっぱり、いつもと変わらない綺麗な顔で。

「無理…すんなよ。お前が我慢してると、俺だって辛いんだからな……」

それでも、お前は、

「別に…我慢なんかしてないよ。」

そうやって

「本当に俺は…大丈夫だから。心配すんなよ。」

微笑って誤魔化しちまう。

「……でも京一、ありがとな。」

「ひーちゃん……」

お前の背負ってる重い荷物を肩代わりしてやる事なんて出来ないが、

「俺達は…俺は、最後まで一緒に闘うからな。」

少しでも、支えてやる事は出来るだろう?

「これから先も、ずっと…お前の隣に居るからな。」

「……うん。」

小さく頷いた、その顔は
前を向いたまま。
二人で吐く息だけが白い。

「今夜は…冷え込みそうだな。ひーちゃん、寒がりだから辛いんじゃねェか?」

「え…?あァ、まぁ寒いのは苦手だから辛いな。」

「んじゃ、決まり!今日はひーちゃんち泊まるから」

「は?」

「『辛い』ってハッキリ言っただろ?朝まで一緒に居て、俺が一晩中あっためてやるよ!」

「あっためる、って…」

「ここ最近バタバタしててお前んトコ寄ってねェだろ?…俺の方が我慢限界なんだよなァ……駄目か?」

「お前な…別に、いいけどさ……全く。」

「よっしゃーッ!久々だからなァ。ひーちゃん俺、頑張っちまうぜェ〜!」

「……アホ。」

呆れるように笑った顔は、
少し照れ臭そうな、
でも嬉しそうな気がして。

それは、俺の
気のせいじゃないよな?

我慢してても辛くても、
言葉に出来ないなら

別の理由にすり替えて。

今は、ただ
ほんの少し寒いだけ――

いつか本当に心の底から
曇りのない顔で
お前が、笑える日がくる

その時まで――










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