東京魔人學園〜陽之間
□届かぬ想い
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日曜の朝
図書館の前で龍麻を見た気がした。
気になって、後で大回りして来たらやっぱり龍麻で、外のベンチに腰掛けて人待ち顔だ。
「龍麻っ!一人か?」
「京一?おっおはよう…」
意外な所で会ったせいか、龍麻は一瞬驚いた表情を見せ、すぐにいつもの優しい笑顔で京一を包む。
「何?美里は?」
「今日は来ないよ。マリィとお買い物だって。」
「なんだ。一人で来てたのかぁ?」
いかにもつまらないといった表情を浮かべる京一を、龍麻はにこやかに見つめながら丁寧に答える。
「読みたい本があったんだけどね…貸し出し中だったんだ。」
「……」
笑顔はいつもと同じで、喋り方も変わってる訳ではないが、話し終わって一瞬見せる遠い瞳(め)が京一の心に残る。
「で、お目当ての本がなくて日なたぼっこしてんの?」
へへっとガキみたいに笑って見せる京一。
「…うん。…なんだか帰るのがもったいなくてね。」
龍麻の様子に心を砕く京一の気持ちをよそに、彼は相変わらずのマイペースで答える。
「あっ。ごめん京一。どこか行く途中だったんじゃない?」
不意に京一の方に体を向けると、曇りのない澄んだ双眸(ひとみ)が、彼を捉える。
「……」
(やべぇよ龍麻。そんな瞳で見るな…)
「別に用事は終わったしな…それよかなんかあったのか?」
心の動揺を悟られまいとして、京一は質問で切り返した。
「……」
「わりィ…余計な事聞いちまったかな?」
真顔になった龍麻に京一が焦る。
「いや…」
一言呟くと、龍麻は笑った。
「大した事じゃないんだ…けど、京一は鋭いね。」
顔に出していないはずの変化を見極められ、龍麻は内に籠もっていたものを吐き出すかのようにため息をついた。
「…当たり前の事なんだけどネ。自分が想うほど、相手は想ってないって事…かな」
穏やかな笑顔を浮かべた龍麻の瞳が悲しかった…
「ふ〜ん。美里にふられたかぁ…」
「……?」
あけすけに言い放つ京一の潔さに、龍麻は驚いて目を丸くする。
それが京一の優しさだと思うから、それ以上何も言えない。
「…そっかぁ〜ふられたんだ僕…」
美里の面影に重なる影を一瞬、心に留めおき、笑ったまま龍麻は黙り込くった。
(そんな顔して笑うなよ…)
愛おしげに龍麻を見つめる京一の心が揺れる。
抱きしめたい衝動を抑え握り締めた拳を、龍麻のほっそりとした指が包む。
ドキっとした。