東京魔人學園〜陽之間

□となりに太陽
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その日は雲一つない晴天。

「ひーちゃん、何こんなトコで転がってんだよ?」

屋上に上がった京一の目に映ったのは、仰向けに寝ている龍麻の姿だった。

返事の無い龍麻の元へ京一は首を傾げながら近付く。

「……寝てんのか?」

身を屈めて覗き込むと目を閉じていた龍麻がゆっくりと、目蓋を開いた。

「光合成してた……」

「光合成?それって、アレか?植物がする……」

「うん、そう。」

「普通、そういうの日光浴って言わねェか?」

「あぁ、そう、かな。」

ぼんやりと呟くと、龍麻はまた、目を閉じた。

「………太陽、」

「ん?」

「……太陽の光で植物って元気になるだろ?」

「あァ、そうだな。」

「だから、俺も元気にして貰おうかなと思って……」

「ひーちゃん……いくら何でも植物と人間は違うんじゃねェのか?」

京一が、うーんと唸りながら腕を組み首を捻る。

「違う、かな?」

静かに身を起こした龍麻は至極、真面目な顔で京一をじっと見つめた。

「………ホント、お前って変わった奴だよな。」

京一は少し呆れたような口調で、それでも楽しそうに全開の笑顔を見せた。

「………あ、」

「何だよ?どうした?」

眩しそうに少し目を細める龍麻を、京一は不思議そうに見つめる。

「……いや、太陽みたいだな、って。」

「はァ?」

「京一が、さ。」

「俺が?」

「うん。」

「…………」

「京一?」

「……なァ、それって俺がひーちゃんを元気に出来るって事じゃねェ?」

「あぁ、そうかも。」

「……へへへ、そうか。」

頭を掻きながら照れ臭そうに、けれどとても嬉しそうな顔で、京一は笑った。

「それなら、よ、」

龍麻の肩に腕を回して引き寄せると、京一はぎゅっと強く抱き締めた。

「これからは、こうやって光合成すりゃいいだろ?」

「京一で?」

「おう、遠慮すんな!」

「……ちょっと、暑苦しい太陽、だなぁ。」

「酷ェよ、ひーちゃん。」

「ははは。じゃあ、元気にして貰おうかな。」

唇を尖らせて拗ねる太陽の背中に腕を回し龍麻は強くしがみついた。

「………ひーちゃん。」

「ん?」

「お前のとなりには、いつも俺が、居るからな。忘れんじゃねェぜ?」

京一が向ける太陽のような笑顔に、龍麻は先刻よりも眩しそうに、

目を細めて、微笑んだ。









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