東京魔人學園〜陽之間

□空を見上げて星に願いを
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――満天に輝く星の下

こんな日に
一緒に夜空を見上げれば

驚く程に満たされて

今年迎える今日という日は今迄よりも特別で

隣で微笑う確かな存在に

幸せを感じてしまう自分が可笑しくて

ずっと勝負を仕掛ける事に躊躇する意気地の無さに

柄じゃねェよな、と

只、苦笑するだけだった



本日7月7日は、日本でいう七夕だ。わざわざ郊外の田舎町に宿を取ったのは星空を見る為だった。

「今夜は晴れて良かったよなぁ。」

「そりゃあ、先生、俺の強運のお陰だろ?」

「そうだな。」

嬉しそうに、素直に頷く龍麻に村雨が苦笑する。

「なァ、先生。」

「ん?」

不意に呼ばれて、龍麻が見上げていた顔を隣に向けると、村雨は至極真面目な眼差しを投げ掛けた。

「先生が望んで俺が願えば何でも叶っちまうかもしれないぜ?」

「……何でも、って?」

「そう、例えばこの世界なんてのも、な。」

相変わらず本音が読み取れない物言いの村雨に、龍麻は微かに笑って見せた。

「………俺はそんなの望んじゃいないよ。」

「だろうな。」

「………………」

「先生にゃ欲が無さ過ぎるんだよ。こんな日の願い事が、空が晴れますように…なんて、なァ。」

「だって、雨だったら見えないだろ?天の川。」

「……やっぱりアンタ、面白ェや。」

口の端を吊り上げて笑いを堪える村雨に、龍麻は少しだけ頬を膨らました。

「………お前の願い事は何なんだよ?」

「俺か?そうだな、俺の願い事は……まぁ、強いて挙げりゃあ……」

「うん?」

「先生ともっと親密な関係になりてぇな。」

「親密?」

「分からねェか?」

首を傾げる龍麻の腰に素早く腕を回した村雨がその身体を強く引き寄せる。

「村雨……!?」

腕の中、龍麻は少し戸惑った表情で村雨を見上げた。

「そんな顔、すんなよ。先生。アンタが望まないってのなら、俺には、手が出せねェんだからな……」

「俺、は………」

龍麻の伏せた睫毛の先が微かに震えていた。

「怖いかい?先生。」

「………怖くないよ。」

龍麻は静かに頭を振った。

「先生、無理すんな。」

抱き締めた身体を解放して離れようとする村雨に龍麻はぎゅっとしがみついた。

「先生?」

「………………」

見下ろした胸元にある龍麻の黒髪を、村雨の指が梳くように優しく撫でる。


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