秘宝〜展示之間

□君のすべてを
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最近、龍麻の様子がおかしい。

よくボーっとしているような気がする。

顔色も、悪いように思う。

周りには気付かれないようにしているが、ふとした拍子にどこを見ているのかわからない表情をする。


「龍麻…?」



最近、気が高ぶっているのか、あまり眠れない。

目を閉じても、冴えわたる意識が眠りを妨げる。

『眠る』という感覚を忘れているようだ。


「どうなってんだ俺の身体は…」



旧校舎での戦闘中。

声を聞いた。

龍麻の声を。

振り向くと、青ざめた顔がそこにあった。

「龍麻…?」

小声で呼びかける。

きっと、仲間に見られたくない顔だろうから。

「…悪い。紅葉」

そう言って僕を見る目は、顔の青さとは裏腹に強い輝きを放っていた。

「フォロー、頼む」

「自覚は、あるんだね」

残る敵は数体。

何事もないかのように敵を倒す龍麻を、僕は今すぐ連れ去ってしまいたかった。



「これで、終わりっ」

龍麻の拳が最後の敵を貫く。

少しふらつく龍麻を呼びかけるふりをして支えた。

触れた瞬間、龍麻の気が高ぶっているのを感じる。

これが、原因…?

「よっしゃ!運動して腹も減ったし、ラーメンでも食いにいくか。な、ひーちゃん?」

「あ、俺は…」

困った、という表情で龍麻が僕を見た。

「今日は僕の家で食事をとる約束をしていたんだけれど」

「は?ホントかひーちゃん!」

「もう用意はしているんだ。龍麻、どうする?」

選択権は、龍麻にある。

僕は、勝手に一つの賭をした。

「ん、紅葉の料理、食べたい。約束してたしな」

「では、今日は失礼するよ。行こうか、龍麻」

「壬生!てめぇ、ひーちゃんの腰抱いてんじゃねぇよ!!」

後ろから聞こえてくる蓬莱寺君の叫び声は無視した。

「ごめん、紅葉。ありがと」

「平気かい?」

「大丈夫。頭は冴えてるんだ」

「そう…」

それを平気とは言わないのかもしれないよ、龍麻。





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