秘宝〜展示之間

□君のすべてを
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「はい、龍麻」

「……お茶漬け?」

「不満?」

「いや、そんなことない」

「僕の特製お茶漬けだよ。あまり、食欲もないんじゃないかい?」

「…………」

「…………」

「…お見通しってことか」

ようやく諦めたような表情を見せる。

「少し、痩せたよ」

「そう、か?…食欲がないというより、俺の身体が求めてこないんだ」

それを食欲がないというのではないかとも思ったが、この場合は違うのだろう。

「必要が、ない?」

「あぁ、そんな感じ」

「寝ることも…?」

「本当に、紅葉は良く気付く」

困ったように笑う龍麻が、愛おしい

そんな感情が押し寄せる。

真面目に心配しているんだけれど、ね。

「君のことだけだよ」

「バカだな、紅葉は」

「顔、笑っているよ」

「…嬉しいから」

「まったく、君って人は…」

やっと、龍麻の顔色が良くなった。

お茶漬けもちゃんと食べてしまっている。

「龍麻は、僕に弱いところを見せてくれるんだね」

「お前に隠し事なんて意味ないだろ。それに…」

「紅葉には、俺の弱いとこも受け止めてほしいからな」

本当に、わかっているのだろうか。

僕が君のことを、どれほど激しく思っているか。

「殺し文句だね」

「紅葉を殺せるのは俺だけだから」

「口だけは元気のようだね」

「本当だな。でも、ちょっと…久しぶりに、眠い」

「龍麻?」

眠いと言って、僕に抱きつく。

そうやって規則的な息が聞こえるまで、長い時間はかからなかった。





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