秘宝〜展示之間

□君のすべてを
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「…龍麻?」

1時間が過ぎた頃。

震えているのがわかった。

「…くれ、は…」

まだ、眠っているのだろうか?

「龍麻?」

「俺、…怖いよ」

龍麻の、本音だった。

「…やっと、言ってくれたね」

いつも、本当に弱いところを見せようとしなかった。

『怖い』

龍麻が、初めて口にした言葉だった。

「龍麻、君は龍麻だ。今、君の身に起こっている異変は力のせいかもしれない」

「紅葉」

「君は黄龍である前に、龍麻なんだから」

「…俺が怖がってるって、気付いてたんだな」

龍麻が、今にも泣き出しそうな顔を上げた。

「僕は、いつも強がってて、でも時々、弱いところを見せてくれる龍麻が好きだよ」

今日は、言えるだろうか。

一つの賭。

君が本当に僕を選ぶなら、言おうと決めた。


「龍麻、君が安心して眠れるのなら、僕はいつでも…君の傍にいるよ」

「紅葉…まるでプロポーズの言葉だ」

「そうだね」

「…………」

「…………」

「……は!?」

「………なんでそんなに驚くのかな」

面白いくらいに龍麻の血行が良くなっている。

あの青ざめた顔が嘘のようだ。

「君を一人で泣かせたくない。僕は、邪魔かな?」

「そんなわけない!」

泣いて良いと言ったけれど。

「泣かないで、龍麻」

僕が、泣かせてしまった。

「龍麻、僕は君のすべてを…受け止めるよ」

龍麻が、龍麻でいられるように…。

僕は、ずっと君の傍にいるよ。




その日を境に、龍麻の調子は徐々に戻っていった。

その原因は僕なのかはわからないけれど。

龍麻が、元気に笑っている。

それだけで僕には充分だった。




「いーすと工房」333番キリリク庵那岐子様からの頂き物作品。
主人公は紅月をイメージして書いて下さったとの事です。
凄く嬉しいですー♪誠に有難う御座いました!(紅月)






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