東京魔人學園〜双龍之間

□雨
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困惑したまま、アザだらけの体を見つめ壬生は小さな溜息をつくと、浴槽に静かに体を沈めた。
温かさが体だけでなく心に沁みて痛い。
初めて龍麻に会った時から気になっていた。
彼は陽(ひかり)
僕は陰(かげ)
共に生きてはいけないけれど、ふとした瞬間、彼の事を探している
大人しく、華奢なくせにとても強い。
イイ男のくせに周囲に埋没していて決して目立たない。
けれど、彼に関わった者は悲しみを飲み込み、より強くより前向きに生きてゆこうと歩き出す。
不思議な男。
(結局…僕も彼の魔力に捕えられたってことか…)
壬生の口元に笑みがこぼれた。

部屋に入るとコーヒーの香りがした。
左手にある小さなカウンターキッチンで龍麻がコーヒーを入れている。
少し広めの1Kの部屋にはベットと小さなテーブルといくつかのオーディオ類があるだけでなんだか物足りない。
部屋の入口で立ち尽くす壬生に龍麻は声を掛け、カウンターの椅子にうながした。
「ありがとう。おかげで助かったよ。」
礼を述べる壬生に龍麻は柔らかな笑顔で応えた。

静かにコーヒーを口にする紅葉を見つめながら、龍麻はようやく安堵の溜息をついた。
思いがけず自宅に連れて来たものの、どうしていいか混乱していた。
冷えきった体を温めるには風呂がいいと思って彼を押し込めたものの、やはり病院の方が良かったかもしれないと思えたり、好きな飲み物を聞いてから用意した方が良かったかもしれないなどと、色々な事が浮かんでくる。
動揺を抱きながら、龍麻の瞳は紅葉を捕えて離れなかった。

壬生は静かにカップを置いた。
龍麻の熱い視線に心が揺れる。
「・・・」
ふいに紅葉は、体の向きを変えると躊躇することなく龍麻の顔に近づいた。
そっと触れるだけの優しいキス。
何度も何度も繰り返し、やがて深く激しいキスへ。
ざわざわと体中を駆け巡る血液が、あがらうすべさえ飲み込み欲望の扉を激しく叩く。
‘開けてはダメ’
かろうじて残された理性がほんの一瞬、龍麻を現実に導く。
胸を押し返され、紅葉は力を緩めると彼を見つめた。
上気した肌が艶やかに輝き、意識が空をさまよっている。
決して嫌がって壬生を押し返したのではない。
壬生は龍麻をそっと抱き寄せ、優しくその腕に包んだ。
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