氷ノプライド+゚終章
□まいたタネ
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「…ったま痛ーい…何時だっけ…?あれ!?」
勢いよくベッドから飛び起きる。また頭が痛んだ。
てか学校じゃん!今ほんと何時!?遅刻すんじゃん!!
「あ…でも仁王と約束したんだ…」
時計を見て気持ちが萎んでいく。
時間は、10時になろうとしていた。1限目は終わってる。昨日まで高校は皆勤だったのに。
まあいいけど。
昨日は二日酔いが酷かったのもあり、あたしは周助の応援に行かなかった。
氷帝が練習休みだから景吾が来るかと心配してたけど、来なかったからあたしはのんびり1日を過ごした。
…この時間ってことは、今日も迎えにきたりはなかったんだろう。
ゆっくり下に降りて顔を洗い、お母さんが作り置きしてくれた朝食を食べる。
リビングはガランとしていた。
香月は私服にしようか制服にしようか迷ってから、結局制服を着ることにした。一応学校の時間だし。私服で学祭の次の日仁王と出かけた時とか、ご老人の目がめちゃくちゃ痛かったし。サボりじゃないんですよ〜ちゃんと振替休日なんですってば。今日はサボりだけど。
仁王と約束の時間には間に合うだろうし、今日は仕方ないよね…
「遅いんだよお前は」
「なんでいるわけ!?」
扉を開けたら、玄関前に景吾が制服姿で待っていた。
後ろにはいつもの車が止まっている。
「どうせ今日は休むつもりだと思ったが寝坊か。今から叩き起こしてやろうと思ったが、手間が省けたな」
「アンタこそ遅刻じゃん!部活は!?なんでこんな時間にウロウロしてんのよ!」
「うだうだ言ってる暇があったら早く乗れ。三限に間に合わなくなるだろーが」
「うわ!?」
無理矢理車に放り込まれて、椅子にダイブする。景吾はドアを閉めると、出せ。と一言言って腕を組んだ。
「…明日とか、迎えに来なくていいからね?」
「また元の幼なじみに戻りたいって言ったのはお前だろうが」
「………幼なじみで、いいの?」
「……今のところはな」
低い声で、景吾が呟いた。あたしは一昨日のことを思い出して、景吾を直視できなかった。
……あたし。景吾にキスされたんだ…
「お前の教室に送ってやるよ」
「い、いいよ!てか来ないでよ!」
「アーン?俺様が送ってやるって言ってんだ。大人しく受け入れろよ」
「今まで交流なかったテニス部の有名人が、あたしを教室に送り届けるなんておかしいでしょ!いろいろ大変になるからついて来ないで!教室にも来ないで!」
「どうせほとんど中学同じやつらだろうが。今さら気にする必要ねぇだろう」
「あたしの友達はあたしがテニス部のマネージャーやってたって知らない子が多いの!だから来ないで!絶対来ないで!」
「お前の都合なんざ知らねぇよ。後で渡すものがあるから、教室で大人しくしてろよ」
「だから人の話を聞いてよ!ほんと迷惑なのっ!」
「じゃあな」
スタスタ自分の教室に歩いていくアイツに飛び蹴りの一発でも食らわしたくなる。だけど教室についてこなかっただけマシか。
渡すものとか知らないけど、特進クラスのアイツがうちのクラスに来るのは大分時間かかるもんね。逃げてやる。
景吾にいきなりクラスに来られたらみんなに注目されるに決まってる。ただでさえ高校になってから、跡部と榊別れたのかな?なんて意味わからん噂が流れてたんだから!付き合ってないっつーの!
今度はまた付き合い始めただとか、跡部とどういう関係!?とか聞かれるに決まってる!
ほんと騒がしいんだから…!
「……そうだ。仁王にメールしなきゃ」
香月は教室に入り、友達に怒られながら自分の席に着いた。まだ先生は来ていない。
from 香月
ごめん。
跡部に捕まって無理矢理学校に連れて来られた。立海に行けないかも。あたしが言い出したのに本当にごめんね
………………
仁王から返事は返ってこなかった。
香月は携帯を閉じた。
…仁王とは、これで良かったかもしれない。
いっぱい仁王を傷つけたのに甘えてあんな電話しちゃったけど、この問題はあたしが自分で解決しないと駄目だろうし…仁王に謝るチャンスだったかもしれないけど、会うのだって嫌がってたし…
ああ、だったらなんであの電話で謝っておかなかったんだろう。酒で酔っててそこまで考えが及ばなかったのかなぁ?ばかばか!あたしのバカぁ!
「…なにさっきから唸ってんだよ香月」
「なんで岳人がいんのよ!」
「や、だって休み時間だし。」
「!?いつの間に!?」
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