氷ノプライド+゚終章
□偽りの愛
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「そりゃ!きっくまるビーム!」
「ダンクスマッシュ!」
「何がダンクだ。できてねぇじゃねぇか」
「なんだよマムシ、だったらお前はスネイクできんのかよ!」
「フシュウゥ…上等だ。どけ!桃城!」
「できなかったら明日部員全員にドリンクな!」
「やってやるって言ってんだろ!」
「あ…本当にできちゃった」
海堂君の打ったボールが綺麗にカーブし、4、5と玉にぶつかっていく。
続いて乾が計算ずくのプレイで順調にボールをポケットに落としていく。(確かこういうのって理系の人得意なんだよね)
あたしは飲み物が空になったので、菊丸の空のコップをついでに取り、ドリンクバーの場所に向かった。
「あ……」
「ごめん。飲み物大丈夫?」
「すみません…」
「香月。大丈夫?持つよ」
「ありがとう周助」
もう一度ぶつかってしまった若い男の人に謝り、あたしは周助に菊丸のジュースを渡す。頭が一瞬真っ白になった。
あの人…仁王と同じ匂いがした。
あの時部屋でしていた匂いと一緒だった。思い出したくないのに。もう、あんなの思い出したくないのに…!
「どうかした?顔が真っ青だけど」
気づくと、みんなのビリヤード台から少し離れたところでベンチに座り、手の中のドリンクを見つめていた。慌てて笑顔を作る。
「そ、そんなことないよ」
「クス…そうかな。僕の思い違いならいいんだけど」
周助が隣に腰掛ける。周助の匂い。
仁王と違って、強い香水じゃなくて、ふわっと優しく包むような甘い匂い
「…周助?」
コップを持っていない方の手を、上から包むように握られた。
「しばらくこうしておいてあげる」
その言葉に、あたしは顔が熱くなった。
甘えちゃいけないのに。あたしは周助に優しくしてもらう資格なんかないのに。どうして今、こんなに周助に救われるんだろう?
もう、今日が最後になるのに。
「コラコラ〜!不二達二人の世界に入りすぎ〜!香月、勝負だ〜!」
「だからなんであたしなのよ〜」
「へへ、棄権なしだニャ!負けた方がたこやきおごり〜!」
「卑怯よ!あたし初心者なんだからね!」
「問答無用っ」
なんだかんだで、菊丸の明るさにも励まされた。
あの記憶を封印して、ただビリヤードをすることだけに集中する。
「ブレイク下手ッスね〜先輩!」
「桃城なんてこと言うのよ!飲み込みは早いんだからね〜!」
「なら、俺が教えてあげよう」
「だ〜!も〜!横から口出ししないでよ!」
「だからそれじゃあ持ち方おかしいですって!そこだけ直したら口出しやめますから、ちゃんとさせて下さいよ!」
「…」
「乾先輩…」
「海堂…いや、何も言わないでくれるか」
「……すみません」
なんか乾が遠くで海堂に慰められてるけど、そんなのどーでもいい!(酷い)
やっと桃城に教わった持ち方で玉に当てることができるようになり、ルールも大石君の説明でなんとなくわかってきた。
「見てろよ…ジャックナイフ!!」
(すごい…!!なんて速いショート打ち!!)
「ふん。相変わらずカッコつけの打ち方だな」
「なんだよマムシ、お前も悔しかったらやってみろよ」
「うるせえ!こんなもん普通にゲームできれば充分なんだよ!」
「不二先輩もこの前やってたの見せて下さいよ!」
「うん。いいよ」
それまでほとんどゲームを見ているだけだった周助が、ゆっくり構えに入る。
「ツバメ返し」
「うわ!ボールが跳ねた!」
「不二先輩、相変わらずビリヤードもうまいですね!」
「クス…僕も結構好きだからね」
「しかもちゃんと9ボールにもぶつけてるし」
3番のボールに当てるついでに、周助は9ボールにも当て、ゲームを終わらせてしまった。
「香月にも教えようか?」
「狽゙、無理だよ!周助みたいにうまくなれるわけないし!初心者だし!」
「そうそう無理無理。榊にはできるわけないっ」
「菊丸に言われると、なんだか腹立つのよね〜」
「へへへのかっぱ!悔しかったら今度は俺に勝ってみろよ〜」
「やってやろうじゃないの!……ん?」
携帯が光ってるのを見つけ、香月が一時休戦に入る。
「ごめん!やっぱ休憩っ」
「なんだよズルいぞ榊!」
「残念無念また来週〜っ」
「真似すんなよ〜っ」
香月はベンチに置いておいた携帯を開き、息を呑んだ。
「どうかしたんスか」
「あ…ごめん海堂君。タオル取れないよね…ハイッ」
「…どうも」
ベンチにあったタオルを海堂君に渡し、トイレに足早に移動した。
From
跡部景吾
件名
Non title
体調は少しは良くなったか?
明日は朝練がないから迎えに行く。
7時に家の前で待ってろ
「……いつも自分勝手なんだから」
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