氷ノプライド+゚終章
□アクセサリー
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女の子はみんなブランド品を持ちたがる。
なんでかって?
そんなの決まってるじゃない★
アクセサリー
―…
「やっほ〜亜美!お待たせっ」
「遅いよ美紀〜うわ!その人美紀の彼氏!?」
無愛想な跡部の腕に腕を絡ませてにっこり笑ってやる。
「そ★美紀の大好きな彼氏っ超金持ちで、財閥のお坊っちゃんなのよっ」
「うわぁ〜いいなぁ…亜美もお金持ちの彼氏超欲しい〜…」
「おい」
「なによ。てか、さっきから態度悪すぎなんだけど」
友人が化粧直しにトイレに行くなり、跡部の不機嫌な声が降ってきた。
ちなみに、管野も丸テーブルに鏡を取り出し、せっせとグロスを塗り直している。
「お前の言っていた放課後どうしても付き合わせたい用事ってのは、俺をあの女に見せびらかすことなのか」
「そうよ。亜美のやつ超羨ましがっていい気味。読モかなんかと付き合ったらしいけど、金ないし遊べないしで愚痴って超うざかったんだよねーもー別に帰っていいよ」
跡部が席を立つ。
管野はマスカラも念入りに付け始めた。
「くだらねぇことに付き合わせるんじゃねぇよ。部活サボらせてまですることじゃねぇだろ」
「はあ?土日に呼ばれるよりマシでしょ。別に嫌なら無理に付き合ってくれなくてもいいのよ。でもさぁ、写真撮った時にいた男友達…榊のこと気に入ったらしいのよねーあの時も止めるの大変だったし。あたし別れるなら、そいつ止めなくていいわよね」
「そんな男どうでもいい。お前の持っているアイツの写真…いくらなら渡す気になるんだ。これ以上くだらないことに付き合ってる暇はない」
「嘘つき。あたしが飽きるまで付き合ってくれるって言ったくせに」
「どうせ金なんだろうが。早く終わらせろ。もう気は済んだだろ」
「分かってないわね。女にとってのステータスは、お金だけじゃないのよ」
「なんだと…」
管野は口元を吊り上げて顔を上げる。
「跡部景吾と付き合ってるってことが、あたしの最大のステータスになってるの。高校で。だからさぁ〜もう少し楽しませてよ?」
「…ネガを渡せよ」
「持ち歩いてるわけないでしょ。切札なんだから」
「ち…っ」
跡部が悔しげに顔を歪ませ、背中を向ける。
丁度、亜美がトイレから帰ってきた。
「あれ?彼氏いなくない?」
「なんか用事があるんだって」
「マジで!?おごってくんないわけ!?」
「あれは美紀だけのだから。忙しいのよ。御曹司様は」
亜美がおこぼれに預かれないことが分かった途端、帰りたい雰囲気を出し始めた。
いい気味…
その様子を見て、管野はまた満足げに笑うのだった。
―…
「…跡部のやつ。ほんとに管野なんかと付き合ってんのかなぁ〜」
「まさか。なんか弱みでも握られてんじゃねぇの?」
「あの跡部が?」
「管野なんかに何弱み握られてるって言うんだよ。香月もそう思うだろ?」
「え…」
岳人に振られ、香月は戸惑う。
今日で丁度一週間が経つ。部外者は立ち入り禁止のはずなのに、部長や先輩たちが口出さないことを知ってか、管野は図々しくいつものようにコートに入り、景吾の腕に腕を絡ませていた。
…すごく、嫌な気分になった。
「景吾が…管野を好きじゃないのは見ててわかるよ」
「だよな!なんで管野なんかにいいようにされてんだろ!」
香月はジローの言葉に、なんだか胸が痛かった。
…あたしなんじゃないの?
景吾は、多分あたしが管野に脅されてるのを知ってる。
管野からあたしに何もしてこないのも妙だ。
全部、景吾に行ってるんじゃないの?
自分を犠牲にしてまで、あたしなんか庇わないでよ…
「全員集まってくれるか」
部長の声に、景吾も管野を振り払い、先輩たちの方に走っていく。
「今週の練習試合、立海とに決まった」
選手達にざわめきが起こる。
ジローは声高々に叫んだ。
「うわあぁ!立海だってよ!丸井君元気かなぁ!!」
「喜び過ぎなんだよジローは。…どうかしたか香月。顔色悪いぞ」
頭が真っ白になった。恐怖に包まれて、うまく言葉が出てこない。
ますます周りは心配するのに。
仁王に会いたくない。会うのが怖い。
今どんな顔をして会えばいいのか分からない。
「あたし…立海行きたくない…っ」
「え?」
「なんでもない!」
香月が岳人達から離れて更衣室の方へ走っていく。
宍戸と岳人が顔を見合わせた。
「どうしたんだアイツ。立海なら知り合いいっぱいいるだろ」
「跡部が管野といるの見たくなかっただけ、とかじゃなさそうだな…」
―…