氷ノプライド+゚終章
□21番目の女
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常勝立海と掲げるだけあって、高等部の世界でも、立海は常に優勝。
立海の高等部テニス部のコートは中等部のさらに奥に進んだところにある。
だからあたしは、赤也が部長しているのを見たいと思い、ちらっと中等部のテニスコートを見てみたけど、赤也は見当たらなく、あっという間に通り過ぎた。
…今日は休みなのかな?
「よお!元気そうじゃん香月!」
「ブン太相変わらず赤いねぇ〜!彼女とかできた?」
「まあな。香月にできて、俺にできないわけないだろぃ」
頭をぐしゃぐしゃにされて、ニッと笑う。
変わってないなぁ…
やり返そうとしたところで、ジローがブン太に飛びついて、話し相手は取られてしまった。
後ろからの足音に香月は振り返る。
「こんにちわ。榊さん」
「久しぶりだな。」
「柳生と柳か…二人とも全然変わらないね」
「クス…それは香月の方じゃないかな」
「はっ!幸村…!」
「やあ。久しぶりだね」
相変わらずバンダナはつけてるけど、表情とか雰囲気が、少し大人っぽくなっている気がした。
「どうして俺がくると身構えるの?」
「いや…なんか捕まったら帰ってこれなくなりそうで」
「クス。それもいいね。じゃあ、そうしようか」
「狽「やあぁ〜!!幽閉されるうぅ!!岳人、ブロックブロック!」
「狽「きなりなんだよ!」
「香月は相変わらず照れ屋さんだな」
「照れてない!全然照れてないから!」
そんないつもの(?)スキンシップをしながら、私たちは立海の部員達がたくさんいる方を目指して歩いた。
…柳生の近くに、仁王がきたのが見えたけど、私は何も言わなかった。
「今日は、学年関係なしのトーナメント戦を行う。選手の組み合わせは、立海と氷帝でそれぞれくじで選ばれた者になる。1日と少ないが、この練習から何かを得て各自持ち帰ってほしい!」
ウィース!と、青学ばりの返事が帰ってくる。
…立海の部長、真田君みたいだな。顔は若いし帽子かぶってないけど、性格が多分似てる(笑)
「なあなあ、香月」
「なによブン太」
ニヤニヤしながら近づいてきたブン太を見て、対戦表をホワイトボードに写すのを止める。
「お前青学の不二と別れたって本当?」
「な…!誰に聞いたの!?」
「なんかこの前青学と練習試合した時に、菊丸がお前が土日来なくなったから、二人は別れたんだろうって言いふらしてたぜ」
アイツなんてこと言うのよ!一気に広まるじゃない!
「…で。周助は何か言ってた?」
「不二?いや、別に。菊丸が不二に聞いても、どうだろうね…ってはぐらかしてたから、いまいち信用ならない情報なんだよな」
「それであたしに真相を確かめようってわけね」
「そーいうこと。」
「さあ、どうだろうね。」
「その顔、お前フラれただろ」
「知らない。ブン太こそもっと丸くなって彼女にフラれちゃえっ」
「あ!ちょっと待てよ〜」
てか、なにニヤニヤしてんのよ!ひどくないブン太!
「おーい、香月〜!……あーらら。行っちゃった。」
「お前なんか喜んでないか?」
ジャッカルが怪訝そうにブン太を見ると、ブン太は嬉しそうに声を弾ませて言った。
「まあね。やっぱアイツとは友達として付き合ってたいし!何より、赤也に教えてやったら、喜ぶだろーなっ」
「ふーん。香月と不二は別れたんか」
「あ。やっぱ仁王も香月にちょっかい出せなくなって嫌だったのか?」
「別に」
「おい、仁王。…なんだアイツ」
「興味があるんだかないんだか…」
二人の言葉を気にもせず、仁王は香月を見ていた。
香月はコートにいる跡部や向日を真剣な表情で見つめていた。
…目が合うことは、なかった。
「香月ちゃん、ドリンクちょうだいっ」
「どうぞ部長」
練習の合間、西宮が香月のところへやってきた。
「どうも。いやー立海も強い一年がいっぱい入ったみたいだねぇ〜やっぱ常勝立海だけあって倒すの大変そうだわ」
「…特に幸村なんかは試合すると手足の感覚がなくなってくらしいから、気をつけた方がいいですよ〜」
「あれ?何か言ったかな。香月」
「狽ネっなんでもないよ!?(なんで後ろに回り込んでるんだよ!)」
「ふふ。ならいいんだけど」
びっくりした…
幸村が笑顔でコートに去った後、香月はため息をついた。
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