激裏跡忍跡小説

□電車男
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忍足は複雑な気持ちでいた。



「景ちゃん………‥?」
「…‥あん?…なんだお前まさか…」

今は夏休み。しかし、ある限られた生徒はのんびりできる事はなかった。

東京都の中でも一番を誇る富豪校、氷帝学園の秋に行われる文化祭。それは、一般の高校とは比べものにならないほど盛大なものだ。そして、それについての実行委員。
それはランダムに学校内から選抜される。
だるくて、会議ばかりなその実行委員に選ばれた暁は、夏休みなんてものは存在しないシステムに自然となっていた。


それは恋人同士の事情としては少々厳しい。


「ほんま堪忍っ!明日も会議やねんっ!」
「てめぇな、これで約束ダメになったの7回目だぜ…?」

ぁぁ、無情。その一人に跡部の愛しい恋人が選ばれてしまったのだ。
「…もぅ、しゃぁなぃやん。俺だって行きたないけど、行かへんかったらペナルティやねん。」

氷帝学園のペナルティ。それは、例のように大事な会議に故意に参加しなかったり、大事なイベントに加わらなかったら発動する。
内容はこう。



生徒たるものペナルティにつき次の進級の資格を剥奪するものとする。




それはあんまりだ。
生徒も必死なのである。

「俺がお前の名前、名簿から抜いてやるよ。」
生徒会長の力を大いに乱用しようとする跡部をすかさず止めに入る。

「あかん景吾っ!お願いやからそれは止めてっっ!

今更恥ずかしすぎる!
と付け足す。
跡部は己らが付き合っていることにむしろ自信をもっている方だが、忍足は公にするのをひどく嫌った。

今、俺が会長の力で抜けたらってわかったら、たぶん関係を疑われる…‥

そんな事はどうしてもさけたい。


「なっ?…‥景吾、我慢して?」

「……っち‥」

そう、だから毎年この遊べない夏休みに痺れを切らしたカップルが別れることは、ある意味の恒例行事だった。
しかし、そこは二人とも口にはださない。
ある意味跡部の忍耐強さに拍手を送りざるを得ないのだ。
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