過去の遺物
□つばめと狐
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廃墟、廃ビル、廃工場。
破棄された建造物はストームライダーにとっては恰好の練習場と化す。
このビルも破棄されて久しく、
今はチーム神来の練習場となっている。
ビルの内外で無数のA.Tの駆動音が響き渡る。
その中には、炎の王と雷の王も見受けられる。
相手はたった2人。
チーム名神来を通り名として名乗る”神来”と、
銀色のA.Tを駆る巫女少女ギン。
圧倒的人数差をものともせず、
飛び交う姿は王と同格の強さを誇った。
屋上でぶつかり合うA.T音を風に乗せて聞きながら、渡り鳥のシムカは隣の彼に聞いた。
「あなたは飛ばないの?」
3人目、寺の住職のような衣服をまとった通称クロは先ほどから戦わず、雷の王率いるブラック・クロウの子供達と戯(タワム)れていた。
「喧嘩は得意じゃないんでね。」
黒狐の面で表情は見えないが、
お菓子や飴玉を配って相手をしてくれる彼に、子供達はすっかり懐き、
膝や肩の上に乗り、腕や背中にべったり張り付いている。
中には、ウトウトと眠りかけている子供をあやしている姿は戦場ではあまりにも不釣合いで、シムカはクスクスと笑わずにはいられなかった。
「子供、好きなの?」
「…大人より手懐け易(ヤス)いな。」
ブラック・クロウの子供達は警戒心が強い。
それをあっさり手玉に捕る辺りは彼の才能だろう。
彼にとって、人は人であり、敵も味方もなかった。