過去の遺物

□風鈴を揺らす風に、声をのせて
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【風鈴を揺らす風に、声をのせて】
(届く、なんて思ってないけど)






曇王の神殿に来て早一月(ひとつき)。

マーティンは友を思う。



なんだかんだといいながらシロディール中を旅した終着点がここであった。

ブレイズに保護されていれば安全であり、

行方のしれない王者のアミュレットを面々が探し、

また、皇帝暗殺の組織から最後の血筋たるマーティン殿下を守るためにもブレイズがあるのは心強いが、

旅の共であり、友であるクオンと共にあることが出来ないこの身が時々はがゆく思う。



「今頃はアルケイン大学にでも通っているのかな。」

ひとところに落ち着けない性質なのか、旅をしている間も何かと厄介事を持ち込んでいた。

そしてそれらをすべてふところにしまい込んで楽しそうに歩くのだ。

「ふふふ、新しい街に着くたび厄介事を引っ掛けていた気がするな。」

人当たりがいのか、世話焼きなのか、厄介事に巻き込まれる性質なのか。

とにかく彼の周りには常に人がいて、なんらかの事件があった気がする。

「それになれてしまった私も変わり者かな。」

きっと最初の厄介事が亡き皇帝であり、自分なのだろう。

それでもクオンは笑っていた。

しょうがないと言って、苦笑して、それも笑顔に変えて笑っていた。



窓を開ければ高山の冷風が入り込む。

「また、君と一緒に旅がしたいと言ったら君は……」

笑ってくれるだろうか。

それとも迷惑がられるだろうか。



今もどこかで巻き込まれている友よ。

この声が届くとは思わないけれど、



私は君に会いたい。

会いに行きたいよ。







<風鈴を揺らす風に、声をのせて 完>
2010/05/24
 

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