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□閑話『女神は北方で笑う』
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その夜、
舟形岩に座する貴船の祭神、高於加美神の前に降り立ったのは懐かしき者であった。
「お前は…晶霞…!」
ふわりと降りて来たのは白銀の髪をなびかせた天に届く妖力を持つと言われる狐妖、天孤、晶霞であった。
真っ直ぐ高於を捉えた彼女は微笑しながらこう言ってのけた。
「――ひとつ、頼みができた。
これから何が起こっても、手出しをしないでもらいたい。」
虚を突かれて瞬く高於に晶霞は満足そうに、悪戯が成功したと笑った。
ここに来たのは狙われることになるだろう眷族が居て、その末裔が”奴”の眼に留まってしまったから。
「必ずここまで遡り、その血筋にたどり着くはずだ。」
厄介なものだ。と息をつく晶霞に高於は「苦労が水の泡」かと至極楽しそうに笑い、
それから唐突に話題を変えた。