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□真夜中の言葉
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出逢った頃の彼の印象はお茶目でなんだか格好良い。でも、肩の上にちょこんと乗る程の小さな赤ん坊だった。

あの頃からもう10年くらいは経ってしまっただろうか。

俺もそれなりに大人になって、あの頃“ごっこ”だと笑って過ごしていたマフィアという組織に今は片足を突っ込んでいると自覚している。

今やボンゴレのボスであるツナの下、幹部として日々忙しない毎日を繰り返していて、時折無邪気で楽しかった昔を思い出す。


「…野球、しよっかな。明日」


全身の力が抜けて汗ばんだ両腕両脚を真っ白なシーツへ投げ出して天井を仰ぎ見る。

ぽつりと呟くと、先程まで山本の身体を好き勝手弄んでいた男が顔を覗き込んで視界を遮った。


「野球か…、懐かしいな。昔のお前を思い出すぞ」


あれだけ動いたにも関わらずリボーンは直前の情事を全く思わせない余裕な顔で笑ってみせた。


「折角の休みだ。一人で青春ゴッコなんてしねーでオレに構いやがれ」


「はは、ひでーなぁ。ここ暫く忙しくて素振りすらしてねーってのに」


「山本、お前はもっとオレを優先させるべきだ。敬え。」


そんな自分勝手な事を言いながら汗で額に張り付いた山本の前髪を掻き上げる。

オレ様な発言が不快に思わないのは生まれ持った性格だからか、それとも惚れた弱みというものなのだろうか。

髪に触れた手でベッドシーツに肩を押し付けられて身動きが出来なくなる。

覆いかぶさる身体はあの頃からは想像も着かない程成長しきっていて、しなやかな筋肉の付いた腕や胸板は何人もの女性を落とす武器になったのだろう。


「…そうだなぁ。」


暢気な声色でぽつりと呟くと山本は言葉を続ける。


「明日、リボーンの相手をする代わりに一ヶ月他の女のとこに行かない、ってのはどうだ?」


軽く首を傾けて交換条件を持ち掛ける。
口元には笑みを浮かべ挑戦的な眼差しを向けて、静かに答えを待つ。


「っふ、……ああ、交渉成立だな。」


リボーンは豆鉄砲を喰らった表情から一辺して、堪え切れずに息を噴き出して肩を揺らし笑う。

表情から想像するよりずっと無機質な、冷めた低い声が耳元で響いた。



end.

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