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* * *



体育祭を控え、僕たちはリレーのメンバーを決めることにした。


「はい。

では、部活対抗リレーのメンバーを決めたいと思いまーす!」


なぜか、まあこ♪ちゃんの司会でミーティングは始まった。


「推薦とか立候補とか、ありますかー?」

「やっぱ、草野じゃねぇ?」


黒板に、さらさらっと渡嘉敷が「草野」と書き付ける。


「じゃあ、泉の名前もついでに書いといて」

「オッケー」

「はい、他にありませんかー」


自慢じゃないけど、僕は結構足に自信があるんだけどな。

誰か、僕の名前を言ってくれないかな……


「寿也も、割と足はえーぞ」


わわ、さすが吾郎くん!

僕のこと、分かってる!


「……あら、そーなの?」


でも、ここは一旦――


「やだな、吾郎くん!僕なんか大したことないよ!」


やっぱり、一度くらいは謙遜して、辞退するべきだろう……


「――あ、トカちゃん。

やっぱ寿くんの名前は消して。

大したことないんだって」


「まあこ♪ちゃん!!」


僕としたことが、声が裏返ってたかもしれないけど、ここはちゃんと言っておくべきだ!


「どしたの、寿くん。息が荒いよ」


「大したことないっていうのは謙遜だよ。

はあ、はあ。

ちゃんと書いといてよ、僕の名前」


「なんだもう、ややこしいなー……ブツブツ」


謙遜は、相手を見てすべきだと教えられた。

他にも薬師寺と、吾郎くんがメンバーに加わった。


「さー、あと一人だけど!

誰がいーのかなー?」


僕は部屋をぐるっと見渡した。

一体、誰が適任だろう?

ふと、斜め後ろに座っていた眉村に目が止まった。

眉村って、足速かったかな……?

すると、ばちっと目が合った。

――なんだろう?

推薦してほしいのかな?


「えーと、じゃあね……」


僕は、眉村の表情を読み取ろうとする。


「あ、そこ!眉村ケン!」


まあこ♪ちゃんが突然指名した。

眉村が正面に視線を移す。

小鼻が少し動いているのは、やはり指名を待っていたからなんだろう。


「頑張ろうね、眉村!」


言った僕に、珍しく彼は小さく笑んで頷いて見せた。


なのに――


「えーとね、眉村ケンの後ろ!

三宅だ!三宅がいーと思うな、あたしは」


「あ、俺も賛成!ミヤケ、と。よし、完成!!」


ああ――僕は、もう後ろを振り向くことができなかった。





わきあいあいとしているリレーメンバーを、指をくわえて見る眉村健。
(三宅が変……)



2011-10-05


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