めいん その他

□越えられなかったモノ
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切なかったけど、僕は幸せでした。
 

超えられなかったモノ                   

大好きな人が居た。僕は君を愛していた。
僕と君は幼いときからずっと一緒に居た。同じ幼稚園から始まり、小学校、中学校、高校、驚いたことに大学まで僕らは一緒だった。

「また一緒。よろしくね。」

なんてもうお決まりの台詞を言い合いながら過ごした。どんなに仲が良い友達よりも、もしかしたら親よりもたくさんの時間を君と過ごした。幼馴染だから、で片付けられるならば、そうしたかった。しかし、僕にはそれが出来なかった。


いつの頃だろう、君のことが好きなんだと自覚したのは。もう大分昔のことに感じる。「好きだ」って自覚してしまったら、もう君をただの幼馴染として見ることが出来なくなってしまった。君と過ごす何気ない日々が、なによりも大切なモノとなってしまった。
そんなことを考えているうちに大学を卒業して、僕らは初めてバラバラになった。君と出会ってから初めて。僕は君が離れていくようで、柄にもなく泣きたくなった。


お互い、長年隣に居た存在が急に無くなったり、なかなか慣れない仕事、生活で忙しく、だんだんと疎遠になっていった。それでもメールはするし、電話も何度か交わしていた。実際に会うことは出来ないけど、君に一番近い存在は僕だと信じていた。君も僕と同じだと、信じていた。


仕事に慣れ、だんだんと忙しくなっていき、君との連絡が取れなくなっていった。でもメールは来ていたし、君からの着信もあった。僕が忙しくて出られなかっただけで。
君と話がしたい。でも忙しくて睡眠を取る時間すら惜しい。そんな理由で一方的に君からの連絡を取ることが減っていった。


仕事も落ち着き、久しぶりに僕から君に電話をしてみた。久しぶりに聞く君の声に少しドキドキしながら。
数回のコールの後、「もしもし?」なんてありきたりの君の声にすら愛おしさが湧いてくる。「久しぶり。」と返事をして君と言葉を交わす。君の声はこんなにも落ち着くものなんだと感じながら。






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