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□願い、ひとつ
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「恭弥、調子はどうですか?」
「むくろ、…」


白蘭に連れ去られた恭弥をやっと、ミルフィオ‐レの本部で見つけた
その時の恭弥は、白濁を全身に浴びて、意志の強かった瞳は何も移さず
ただ、僕の名前を呼ぶか「ごめん…」と、か細い声でただひたすらに繰り返していた

ボンゴレのアジトに連れ帰って来てからも、恭弥が元の恭弥に戻る事はなかった

白蘭に抱かれ続けた恭弥は壊れ、感情を表に出す事がなくなった
普段からあまり感情を表に出す方ではなかったが、それなりには反応してくれた
だが、今はそれすらもない


「むくろ、?」
「あぁ、少し考えことをしてました」
「そ、う…」

恭弥、と名前を呼んで、腕の中にぎゅっとを納める
始めこそは身体を強ばらせていたが、次第に力が抜けて僕に寄り添う様に、もたれかかってきた

「ねぇ、骸…」
「何ですか?」
「……抱いて、いいんだよ…?」

「えっ…」

恭弥の放った言葉に唖然とした


「骸、我慢してるでしょ、僕は大丈夫だから、いいんだよ」
「しかし、」
「お願い…骸、抱いて」

多少の不安はあった
しかし、恋人にこんなことを言われて、僕は我慢できる男ではない






「恭弥、大丈夫ですか?」
「ん、大丈夫」

ロ‐ションで後孔を念入りに解かしていく
室内に響くのは水音ばかりで、恭弥が喘ぐ事はない
不感症…恭弥を抱くのを躊躇ったもう一つの理由

白蘭によって植え付けられた恐怖によって、恭弥は行為に快感を見出だせなくなった


「骸、もういいよ」
「でも、もっとちゃんと解かさないと」
「分かってるでしょ、…」
「…すみません」
「謝らないでよ…僕で気持ち良くなって?」

「ホント可愛いですね、貴方は」


そう言った恭弥のナカに挿入し、数回突き上げ、中に精液を注いだ
それを何度か繰り返し、恭弥を抱き締めて眠りについた



「んっ、むくろ…」
「……スゥ………」

目覚めれば、愛しい人が隣で眠っている
身動きが取れないのは、骸に抱き締められてるからだろう

骸が側に居て、愛してくれる

それは“幸せ”なのに、何故だろう…



「骸、ごめんね、ごめん…」

謝っても許されない過ち
骸を感じない身体…


骸は優しい
僕が言えば、何だってしてくれる
信じていい筈なのに、信用する事が怖い
僕の傍に居るのは罪悪感からじゃないのか
骸を縛り付けてるんじゃないか
なんて、そんな想いを勝手に抱いてしまう


「、…いやだ……」

嫌われたくない
それ以上に望むことなんてないから
怖い、嫌だ
骸に嫌われたら僕は生きていけない

「ん、…きょ、や…?」
「ごめん、起こした」
「いえ、大丈夫ですよ」

いつの間にか起きていた骸に、再び抱き締めなおされる

「むくろ…」
「んっ、何ですか?」
「僕は骸を愛してるよ」
「?…クフフ、急にどうしたんですか?」

骸の温かい手で撫でられる、そのぬくもりに内心泣きそうになった


「骸は?…骸は僕の隣に居るの、辛くない?」
「何を急に…」
「僕、汚れたんだよ…そんな僕でも骸は「恭弥」

愛してくれるの?、そう続けようとした言葉を遮るように僕は骸に抱きしめられた


「そんな、自分を汚いだなんて言わないでください」
「でも怖いんだ、こんな僕を骸は愛してくれるのか、傍に居るのは罪悪感からじゃないとか」

「そんなことあるわけないでしょう
僕は罪悪感から、側にいるなんてお人好しではありません
恭弥を愛してるから傍に居るんです
恭弥の傍に居て君と共にありたいから側にいるんです」


「すみません…護れなくて、不安にさせてしまってッ」

唇を噛み締めた骸の悔しそうな声

「もう絶対に君を離したりしません」
「骸…ありがとう」



言ってくれた事が嬉しかった

側にいたい

骸を愛していたい

どうか…

こんな僕だけど

君の側にいさせてください


い、ひとつ
(それだけで僕は救われる)



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