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□孤独な紅い月
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二人きりの闇。
夜空に浮かぶ月だけが、鮮やかな紅い輝きを放っている。
そのアカイロが血を連想させて、少し怖かった。
「月、綺麗だね」
紅い満月は骸の右目の様に神秘的で、どこか不吉を感じさせる。
それでも、美しいと思えるのは骸の存在があるから?
「そうですね」
肯定の言葉が紡がれる。
紅い月を背景に背景に、骸はくすりと笑う。
瞳の鮮朱と冷蒼がゆらりと揺れて、その手が僕の首に掛けられた。
「な、に……?」
ゆっくりと、少しずつ込められる力が強くなる。
息苦しさに呼吸が乱れ、目が、意識が霞む。
「月なんかよりも僕を見てください。僕だけを見ろ」
減多に聞くことのない命令口調で、ゾクッとするほどの低い声で囁かれた。
紅い満月が僕たちの頭上で笑っている。
「恭弥」
掠れた声で名前を呼ばれた。
悲しそうな微笑みを浮かべた骸は別人の様。
「…………っ」
表情に気をとられて、反応が遅れた。
鋭い痛みが胸から全身に広がっていく。
生暖かい液体が足元を濡らした。
「むく……」
手に三叉槍持った骸は変わらず微笑んでいる。
その刃の先端には月と同じアカイロの…僕の、血。
それを理解するのに、無駄に時間が掛かった。